ゲオルギーの改革
「ゲオルギー殿下、おめでとうございます」
「ウィッテ、苦労をかけたが、君のおかげで無事に憲法と国会を創ることが出来た」
「殿下のご尽力のおかげです。殿下がおられなければ、戦争は終わらず内戦も続いていたでしょう」
追従では無い率直なウィッテの言葉だった。
講和会議では軍が勝手に進撃を行い朝鮮半島の鎮圧に向かっていた日本軍を撃破。
気を良くしたニコライ二世が講和条件をロシア有利に、日本にとって屈辱的な内容にしてしまい講和の機会を失った。
その後逆転され、ロシアは窮地に陥った。
内戦も酷くなり、ロシア帝国は崩壊するかと思われた。
しかし、ゲオルギーの尽力により、日本軍に勝利し講和の機会を得て戦争は終結。
内戦も鎮圧できた。
講和は、ロシアに不利な内容だが、致命傷では無い。
領土は割譲したが極東の僻地であり、賠償金の支払いも不要だった。
ロシアは最低限の名誉は保たれ、戦争は終わった。
これ以上、何を望むというのだ。
現状からすれば最善と言って良いほどの状況だ。
「だが、これからだ。疲弊したロシアを立て直さなければならない。まずは国会の開催とそのための選挙だ」
「はい、しかし、反帝国的な者や活動家もおりますが」
ロシア内戦により各地で武装蜂起が行われた。
その中には過激な主張を訴えるグループもいる。
厄介なことに、一定の支持層がいるため彼らの指導者が今度出来る国会の議員に当選する可能性が高い。
「心配ない。ストイルピン」
「ここに」
内政と反乱鎮圧に辣腕を振るうストイルピンが、前に出てきた。
「命じておいた名簿は創ってあるか?」
「はい、反帝国的、共産主義者およびその支援者を書き記してあります。オプリーチナを動員してすぐに逮捕できます」
「何をなさるのですか」
「反帝国的すぎる人物とその支持者を逮捕拘束し、選挙に立候補できないようにする。残った穏健派で国会を運営する」
「それは選挙の介入では」
「では、帝政を転覆させようという輩を国権の機関に入れるというのか」
「それは……」
「安心しろ、彼らは犯罪を犯している。犯罪者を逮捕するだけだ。法律的には何ら問題は無い」
もっとも、容疑や微罪での拘束、いわゆる別件逮捕も多い。
しかし、国会をまともに機能させて帝国の機関として活動させるには過激派による混乱や敵対を最小限に抑えなくてはならない。
「まあ過激派は腕力と声ばかり大きい。統治の方法、民衆が求める穏やかで豊かな生活とはほど遠い。代表者を逮捕すれば後釜狙いで候補が乱立し内紛で自然崩壊するだろうが」
主だった人間を逮捕するのはそういう効果も狙ってのことだ。
「ストイルピン、よろしく頼むぞ」
「お任せくださいゲオルギー殿下の命を受けては必ず遂行しませんと忠臣とは言えません」
過剰だったが、ストルピンがここまで言うのには訳があった。
これまでの皇族なら声をかけるだけだが、ゲオルギーは反体制派のメンバーの名簿を作成しておりストルピンに渡していた。
「しかし、このような名簿をどうやって手に入れたのですか?」
受け取ったのは名前だけで無く戦争中の破壊工作や金の流れなどの情報も入っていた。
中には、証拠さえ同封されておりストイルピンの仕事がやりやすかった。
「私も、情報提供者がいる。それを活用して欲しいだけだ」
「誰なのです」
「済まないが言えない」
「いや、失礼致しました」
まさか、鯉之助、日本からもたらされた情報とは言えなかった。
戦争中にサボタージュや破壊工作を行うよう資金提供した過激派、特にロシア帝国を転覆させ共産主義革命を行おうとしているグループを売っている。
勿論、外に漏れれば日本や海援隊の評判、特に独立の為に動いているアジアの人々から不信感をもたれるので流出元が鯉之助だとばれないようにしている。
ゲオルギーとしても帝政を転覆させようとしている連中を野放しにして億基hあないので今後も情報を得るために秘匿し続けるつもりだ。
「どうだウィッテ。これならば問題ないだろう」
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