朝鮮半島の処理

 日露戦争は朝鮮半島を巡って戦われた。

 満州で日本軍が戦ったのは、朝鮮半島の付け根である満州において、朝鮮半島に向かおうとするロシア軍を撤退させる為だ。

 その目的は達成出来た。

 しかし、今後日本は日本本土の安全の為に、朝鮮半島を確保しなければならない。

 だが、駐留する兵力は最低限に抑えたい。

 収入が少なく経費ばかり掛かる状況など不良債権でしかない。


「出来るだけ少ない兵力で抑えたいけど」


「反乱を起こしたのに、放っておける?」


「無理だね」


 ポーツマス講和会議の最中、大韓帝国軍が日本に対する反乱を起こした。

 中立を維持するためという真っ当な主張だが、日韓議定書に反している。

 だから全力で潰したのだが、今後も反乱を起こさないとも限らない。


「大韓帝国軍は残すけど、韓国駐箚軍の指揮下に入れておこう。韓国駐箚軍の許可が無ければ動けないようにしておく。朝鮮半島で反乱が起きたら彼らに任せよう」


「また大韓帝国軍が反乱を起こしたら?」


「彼らを監視する為に二個師団、朝鮮半島で募集する外人歩兵第一師団、それと日本から選抜部隊を送り込んで編制する駐留師団で構成する。あと釜山や仁川、羅津、清津当たりにも独立守備隊と港湾部隊を置いて日本からの航路を確保する。朝鮮半島の鉄道にも守備隊を置いて、鉄道線を確保。反乱が起きれば日本本土の部隊が、海を渡って上陸して、鉄道で急行して鎮圧する」


「それで押さえ込めるの?」


「軍事面に関してはこれでいい。統治に関しては統監府を作り大韓帝国皇帝と政府を監視する」


「出来るの?」


「統監府には伊藤博文さんあたりを任命して統治して貰う」


「同意してくれるかしら?」


「朝鮮の独立論者だから大丈夫だよ」


「どういうこと?」


「どうも日本政府の中に、朝鮮半島を日本に併合しようと考えている人間がいるみたいだ」


 この前の反乱騒ぎを見て、大韓帝国が信用出来ないので日本に併合し、植民地にしようという考えを持つ一派がいる。


「外国が許すの」


「むしろ、奔放な朝鮮を見て日本に統治して欲しいと考えているところが多い」


 中国を主としていたが日清戦争に敗れると日本に尻尾を振る。

 だが、三国干渉でロシアに日本が折れると今度はロシアを主として尻尾を振り戦争の最中に日本に対して牙を向く。

 しかも開国が遅れている上に、制度上も遅れている。このような国は日本に併合されて発展させた方が良いと諸外国は考えるようになっていた。


「けどそんなことは勘弁だ」


「どうして?」


「費用が掛かりすぎる」


 朝鮮半島は安全保障上、日本にとって重要な地域だ。

 港湾もそうだが、南部は農業が盛んで作られる米は安価で日本にも流通している。北部は鉱物資源が盛んで、鉄や銅など多くの鉱物が採れる。

 これらが日本に入ってくれば、関連する半島の地域は発展可能だ。

 しかし、特定の地域だけだ。

 他の地域は貧しい。

 それらの地域を豊かにするなど、まして日本の金と人材を投入してまで行う事ではない。


「だから、併合など行わない。行わせない」


 史実の日本も朝鮮半島は赤字経営だった。

 ようやく黒字になったのは太平洋戦争のころだ。

 結局日本の持ち出しが殆どだった。


「ここは余計な出費を抑えるためにも伊藤博文さんに併合派を抑える為にもトップになって貰うよ」


「それで完全に支配出来るの?」


「あとは経済面から支配するだけ。前にも言ったとおり、大韓帝国には金本位を実行させる。その地金の管理と決済は東京とホノルルとロンドンで行い、朝鮮では行わせない。足りない分は日本が貸し付ける。少しでも反抗するようなら、朝鮮の通貨が暴落して困窮するようにしておく」


「相変わらず悪辣ね」


「これくらいの事はするよ。反乱を起こしたんだからね。そしてこれは沿海州や満州の統治にも使えるはずだ」


 占領した満州や沿海州にも銀行を作り、金本位を徹底させる。

 勿論、地金の管理と決済は東京とホノルルで行う。

 これで日本がアジアの金融の中心となる。


「アジアを纏め上げる事が出来る。そのための第一歩さ」

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