ロシアの窮状
日本は対露開戦を覚悟した時から戦争に備えて欧米に武器を大量に発注していた。
特にドイツからは大量の弾薬と武器類を発注していた。
だが、開戦で国際法により武器を輸出できなくなった。
そこで日本本国に送れなくなった武器類を、海龍商会が買い取り、トルコへ輸出していた。
特にイギリスで建造されていた皇海級五番艦、六番艦をトルコが入手しようとしている点はロシアには看過出来ない。
ロシア開戦に備えて建造させていたが戦争が長引いたために、日本海軍は手に入れる事ができなかった。
さらに日本海海戦によってロシアの海軍戦力が壊滅したため日本海軍と海援隊は圧倒的優位に立った。
むしろ戦艦だけで海援隊と合わせれば前弩級六隻、弩級四隻。
さらに弩級戦艦並の火力と従来艦の速力を凌駕する巡洋戦艦が二隻、準主力としても活躍できる装甲巡洋艦が一二隻。
さらに建造中の戦艦や巡洋戦艦もいる。
日本海海戦で大敗北したロシア海軍の戦力は消滅してしまっている。今の状況では日本が持つ戦力は過剰戦力となってしまう。
そしてドレッドノートの誕生により弩級戦艦の時代に突入。
前弩級、三笠などの帝国海軍主力艦艇は旧式化した。
また弩級以上の戦闘力を有する超弩級戦艦河内級の建造計画も始まっており、弩級さえいらない状態である。
日本海軍が建造中の鹿島、香取を受け取ったとしても、維持費が掛かるだけの持て余す存在になる。
ならば、ロシアとの宿敵であり緊張状態にある上、海軍力が劣っているトルコに売却し運用して貰った方がよいということで、売却しようとしていた。
その時の坂本の交渉が凄まじかった。
イギリスはインドという最大の宝石を維持するため、インド航路、イギリス本土から地中海を通りスエズを通ってインドへ抜ける航路の維持に神経質になっている。
そのためドイツが建艦競争を仕掛けてくる、ほんの少し前までイギリスは地中海艦隊に本国艦隊以上の戦力を与えていた程だ。
トルコは地中海沿岸にあり、戦艦を売却して保有されたらトルコの戦力が大きくなり敵対した場合イギリスの脅威になって仕舞う。
しかも、トルコはイギリスのライバルであるドイツとバグダッド鉄道の建設に合意しており、ドイツとの接近が危惧されていた。
そこを龍馬は突いた。
この状況でトルコに戦艦を売却することで、日英同盟寄りに引き込むメリットを強調したのだ。
同時に、地中海航路への危機感もイギリスは懸念しはじめる。
結局イギリス側はトルコに渡せないと自ら香取と鹿島を購入し、スウィフトシュア型として就役させた。
坂本がハーグへ向かった理由も香取と鹿島の売却の為だ。
だが、トルコとの話し合いも続いていた。
日本海軍の余った戦艦を売却する交渉が続いていた。
英国のシーレーンである地中海航路への脅威が強まるとして反対の声もあったが、トルコとの友好を改善する上で必要、さらに戦艦を売ることで関係を強化できるとした。
弩級ではなく前弩級を売る事でトルコの戦力増強を抑える事が出来るという算段もある。
そして、イギリス海軍が十分に弩級、あるいは開発に成功した超弩級戦艦を配備後に改めてトルコに弩級戦艦若しくは超弩級戦艦の購入を打診しようと龍馬と鯉之助は目論んでいた。
この状況は黒海の海軍力が大きくトルコ側に移り、ロシアが劣勢になる。
トルコ軍の陸軍軍備も増強され、カフカスやバルカン半島が危うくなる。
ロシアとしては今すぐ戦争を終えてトルコに対する備えを準備しなければならなくなった。
「ロシアにとってトルコが危険なことは認めますが、日本もこのまま戦争を続ければ危ういでしょう。戦費がかかり過ぎて国庫は火の車だ。そもそも、ロシア領へ入り込んでも統治出来ないでしょう。シベリアを統治するだけの国力があるのですか?」
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