筑波型巡洋戦艦接触
インペラトール級は、最新の通信機材が搭載されており、高出力の電波を出せる。
同じ波長の電波を出せば、上書きされて通信不能、最低でも通信の聞き取りが不可能になるはずだ。
「よし、やってみろ」
上手くいくかどうか分からないが、対抗できる手段があるなら何でもやっておきたかった。
指示通り電波が出され、飛行船の通信は妨害された。
「多少は効いてくれると良いのだが」
と言いつつ、更に念を入れて、レーマンは針路を北寄りに変更し、追撃の手を逃れようとした。
もし、妨害が効いているとしたら、妨害前の位置情報を元に敵は行動するはず。
上手くいけば、敵の待ち伏せを回避出来るかもしれないからだ。
実際上手くいったのか、暫くは敵の接触がなかった。
敵はいない。
対馬からやってくるには遠すぎると幕僚達は考えていたし、レーマンもそう思った。
しかし、どうしようもない嫌な予感がレーマンにはした。
そして肯定するように報告が入った。
「南方にマストを発見! 我が方へ接近してきます」
「敵艦の種類は分かるか」
「まだマストの先端だけです」
熟練の見張り員は水平線から突き出たマストの形で船型を当てることが出来る。
タダの商船である事を祈りたかったが、見張り員の返答は違った。
「敵艦は筑波型!」
「間違いないか!」
「間違いありません! パコダの様な何層にも積み上げられた形は見間違いようがありません! 敵艦急速接近中!」
「此方射撃指揮所! 距離は三万五〇〇〇を切りました! 今、三万四〇〇〇!」
遠距離射撃用に搭載した測距義がマストに取り付けられた射撃指揮所から観測し、敵艦の位置を、接近を、操作員の焦り知らせる。
同時にレーマンも、焦燥感を抱いた。
「敵艦発見!」
「やっと見つけたわ」
満足そうに明日香は報告を受けて言う。
飛行船の誘導に従って航行していたが、途中で妨害のため通信が受け取れなくなってしまった。
一時は焦ったが、鯉之助から、電波の方角へ向かうよう鯉之助に指示され、向かったら遭遇できた。
「相変わらず、変なところで勘が良いのよね、鯉之助は」
憎まれ口を叩きながらも鯉之助の事を信頼している明日香だった。
「さあ、砲撃開始よ。距離を詰めた後、砲撃。取り舵! 敵艦隊の正面に出て針路を塞ぐ」
「宜候!」
明日香の指示に従い、二隻の筑波型は第四戦艦隊の正面に出て行く針路を妨害すると共に全砲門を敵に向けられるように回頭する。
二九ノットの優速を生かして第四戦艦隊に先回りするように走って行った。
「敵までの距離二万五〇〇〇! 間もなく有効射程に入ります!」
「砲撃用意! 距離二万で射撃開始!」
「了解! 諸元入力開始」
目標とする敵艦、先頭を航行する艦の位置、速力、針路を観測し、射撃指揮装置に入力していく。
「敵艦の方位右五〇度、距離二万一〇〇〇メートル的速一九ノット、的針二六〇」
「主砲旋回! 右一一〇度、仰角四四度!」
筑波の前後に二基ずつ配置された主砲塔が右に向かう。
丁度全ての主砲が撃てる方位だった。
「射撃準備完了!」
「敵艦までの距離二万! 有効射程です!」
「砲撃開始!」
鋭い明日香の命令に、直ちに筑波の一同は反応した。
「撃ち方始め!」
「撃っ!」
艦長の号令の後、砲術長が引き金を引き、連装四基、八門の大砲が一斉に火を噴く。
後続の生駒も筑波の発砲に続いて、敵二番艦を狙い射撃を開始した。
二艦合計一六発、重量三八六キロの砲弾が初速七三二メートルで放たれた。
二万メートル先の敵艦に対して、およそ四五秒後、五六度の角度でインペラトール・ピョートル一世と続行ずるインペラトール・エリザベータの周囲に落下してきた。
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