アラスカ購入

 ホノルルにいたアメリカ海軍を追い出し、アメリカの武力介入の恐れが無くなった王国と海援隊は公安委員会への反撃を開始。

 公安委員会は反逆罪を適用され、海援隊の部隊がホノルルライフルズの制圧を開始。

 激烈な反撃が行われたが、大砲などの重装備を持ち各地で戦闘を繰り広げた百戦錬磨の海援隊が圧倒し、ホノルルライフルズは一日で半数が死傷し制圧された。

 クーデターに関わったアメリカ人を逮捕し裁判に掛け、処刑もしくは財産没収の上、国外追放した。


「アメリカ人がいなくなったお陰でハワイ王国は真の独立国となりました」

「それは良かったですね。ですがアメリカが黙っていないのでは」

「ええ、そこでも夫が頑張ってくれました。」


 武力蜂起して反乱を起こしたアメリカ人農場主の処断は後顧の憂いを断つため、法令を曲げないようにするための必要な処置だった。

 だが、首謀者への処罰を行わないよう、新聞に取り上げられることを恐れたクリーブランド大統領との約束に反するものだった。

 当然、大統領から非難声明が出されたがハワイは独立国でありその司法に介入するのは内政干渉であり、ハワイを併合する機なのかとクリーブランド大統領に反論を行って黙らせた。

 新聞に関しては、ピューリッツァに依頼して出来るだけ報道しないよう、他の記事を優先的に書くように依頼して抑え込んだので大丈夫だ。

 だが、穏健派でハワイ併合の阻止に活躍してくれたクリーブランド大統領の面子を潰すわけにはいかないし、心証を悪くする訳にはいかない。

 そこで鯉之助は英国へ帰国する途上アメリカに立ち寄り大統領と事の顛末を説明すると共に代償としてアラスカ購入を打診した。

 1867年に露土戦争とクリミア戦争でロシアが戦費による財政逼迫解消のため合衆国に720万ドル――現在の価値でおよそ120億円で売却したアラスカ。

 だが、アメリカ国内では巨大な冷蔵庫を購入したと非難されていた。

 当時のアラスカは特に資源も無く、雪と氷だけでカナダが間に挟まる飛び地のような場所であり、不要な存在だった。

 このアラスカを海援隊が2000万ドルで購入することをクリーブランド大統領に持ちかけたのだ。

 クリーブランド大統領は最初、耳を貸さなかったが、1893年不況が押し寄せると収入確保の為にアラスカ売却を承認。

 2000万ドルを支払うことで海援隊はアラスカを手に入れた。

 最初こそ、海援隊の内部から無駄遣いと言われたが、鯉之助がヘッドハンティングして雇った白瀬矗などをはじめとする探検隊がノーム、ジュノー、フェアバンクスで近郊を発見。ゴールドラッシュが始まりアラスカは発展を遂げた。

 支払われた2000万ドルを上回る金が掘り出され、鯉之助の評価は上がった。


「夫達には返せないほどの恩を受けました。ハワイは海援隊と日本を助けます」

「十年前にも十分に助けられているよ」


 ハワイ革命の後始末を終えて英国に戻った鯉之助は完成した戦艦富士を受け取り、日本へ回航しようとする。

 だが丁度日清戦争が発生してしまった。

 戦争への中立維持のため日本への引き渡しを拒む英国の間に立たされた。

 だが、ここでハワイ王国が富士の購入を打診。

 富士はハワイ王国艦として引き渡され、ハワイへ回航される事になりそのまま航行を続けた。

 そして、台湾沖で針路を変更。

 日本へ入港すると日本へ売却、引き渡しを行い富士を日本に届けたのだ。

 ハワイ革命で王国を支持してくれた日本へのお礼だった。

 黄海海戦は終わっていたが、富士を手に入れた日本海軍は直ちに威海衛へ出撃させ北洋水師の残存艦隊を威嚇。

 水雷艇の夜襲もあって主力艦多数を失って壊滅した北洋水師は降伏した。

 北洋水師の降伏により、黄海の制海権を失って天津、北京の安全も失われ日本の侵攻に怯えることになり日本と講和を結ぶことになった。


「本当に素晴らしかったわ」


 うっとりとした目でカイラウニは鯉之助を見つめた。

 そして、一連の事件でカイラウニを助けた鯉之助はカイラウニから求婚されて結婚して今に至る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る