龍馬の息子 知識チートで海援隊と共に明治を駆け抜け日露戦争を楽勝にする！

発砲

　敢然と攻撃命令を下した鯉之助は艦橋内に響くよう大声で命じた。

「全艦最大戦速！　旅順へ突入せよ」

「宜候！　機関最大戦速！」

　最大戦速即時待機を完了していた機関のバルブが開かれ、大量の蒸気が宮原缶からパーソンズ式タービンへ流れ込み、スクリュー軸が高速回転する、うなり音が床から響いてくる。

　手すりに掴まってしまうほどの加速の衝撃が船体に加わり、綾波達は旅順に向けて突入していく。

　砲弾は装填され、魚雷は発射を待つ。

「後続艦へ信号！　我に続け！　発火信号を継続発信」

「宜候！」

　信号員が後続艦に向かって信号灯で伝え、速力を上げる。

　波風が強いが一〇〇〇トンの巨体はものともせず、敵艦に向かって進撃を続ける。

　荒海を越えるために駆逐艦の大型化を推進したが、それが間違っていないことを鯉之助は実感していた。

「右舷より接近する船影あり！」

　見張り員の報告に艦橋に緊張が走った。

　はぐれた味方駆逐艦か、それとも哨戒に出ているロシアの駆逐艦か。

　突然発砲されるのではないか、その前に攻撃すべきか、だが万が一味方だったら誤射してしまう。

　いや、味方でもこちらを敵と誤認して誤射してくることもある。

　鯉之助は司令長官として、あらゆる可能性を頭の中で巡らし何をすれば良いのか何度もシミュレーションする。

　そして、行動を確定する報告がもたらされた。

「ロシア駆逐艦です！　現在我が艦に接近中！」

「哨戒の駆逐艦か」

　第一駆逐隊が遭遇したロシア駆逐艦ベズストラーシヌイとラストローブヌイの二隻だった。

「ロシア駆逐艦より発火信号です」

　敵味方が分からず鯉之助達に誰何しているのだろう。

「どうしますか」

「返信してやろう。砲撃用意！　探照灯照射！」

　尋ねてきた艦長に鯉之助は命じた。

「第一一駆逐隊の目標は敵一番艦！　第一二駆逐隊は敵二番艦を攻撃！　準備でき次第発砲」

　二隻は攻撃部隊の退路に位置しているため、攻撃終了後、帰投する時攻撃を受けたら混乱してしまう。

　早急に排除することにした。

「了解！　砲術長！　準備でき次第発砲せよ！」

「宜候！　射撃方位盤の威力見せてやります！」

　艦橋後方の射撃指揮所から砲術長金田秀太郎大尉が答える。

　前方に配備された一門の一二サンチ砲が旋回しロシア駆逐艦に照準を合わせる。

　中部の二門と後部の二門も同じように照準を終えた。

　宣戦布告はされていないが、既に外務大臣によってロシアへ国益を守るため日本は自由行動――先制奇襲攻撃さえ行う、と宣言している。この状態で攻撃しても国際法上問題ない。

　ならば、先に撃って機先を制する。

「探照灯照射！」

　綾波から探照灯が先頭を走っていたベズストラーシヌイに向かって放たれる。

　後続の式波もラストローブヌイに探照灯を放ち、指揮下の駆逐隊へ目標を指示する。

「準備良し！」

　佐々木麗少佐をはじめ、艦橋の全員から期待の眼差しが鯉之助に集まった。

　準備でき次第発砲と言っておいたのだが、記念すべき第一弾は頭である自分の発声で撃って欲しいとのことだろう。

　苦笑しつつも鯉之助は命じた。

「砲撃開始！」

「撃ち方はじめ！」

「撃てっ！」

　鯉之助の号令で、艦長が命令し、砲術長が引き金を引くと、四門の一二サンチ主砲が一斉に火を吹いた。

　砲弾は次々とロシア駆逐艦に飛び込んでいく。

　四発の砲弾の内半数は至近距離に接近してきた駆逐艦に命中した。

　続けざまに射撃が行われ、更に命中弾が加えられる。

　指揮下の三隻もそれぞれ主砲を向けて砲弾を放つ。

　四隻合計十六門の一二サンチ砲が、毎分一〇発の発射速度で砲弾を放つ。

　開発させた射撃方位盤のお陰で、統制射撃が可能となり正確な射撃が出来る。

　砲側照準でバラバラに撃たせてはこんなに上手く行かないだろう。

　開発させた甲斐があったというものだ。

　たちまちのうちに命中弾が発生し、駆逐艦は炎に包まれた。

「砲撃中止！」

　鯉之助が命じた時には駆逐艦は大火災を発生させ、傾斜していた。

　まもなく沈むだろう。

　二隻目の様子を見たが、こちらは半分沈んでいる。だが、第一二駆逐隊はなおも砲撃を加えている。

　次々と砲弾が命中し爆発と火災を起こした後、弾薬庫に命中したのか、大爆発を起こして沈没した。

「二分か」

　戦闘開始から撃沈まで二分間だけだった。

　一〇〇〇トンクラスの大型駆逐艦八隻と二五〇トン程度の駆逐艦では勝負にならなかった。

「さすが綾波級駆逐艦だ」

　自分が計画し完成させた駆逐艦が圧倒的な勝利を導くだけの戦力であることに鯉之助は自信を深めていった。

※綾波型の詳細はこちらのコラムに

https://kakuyomu.jp/works/16816700428609473412/episodes/16816700428609481864

　鯉之助は敵駆逐艦が沈んで静かになった海面と、周囲の状況を確認して号令を下した。

「敵艦の撃破を確認。脅威は除かれた。襲撃を再開する。旅順に針路を取れ！」