宇宙工学という夢のために進学校への受験勉強に取り組む涼太郎くんと、その夢のきっかけを作った二つ歳下の鈴ちゃんの、ぎゅっと凝縮された夏休みの一日。誰もが「ああ、楽しかったな」と思い出すことのある、暑くて楽しくてちょっとほろ苦い夏のポートレート。
一日が終わりかけた頃、鈴ちゃんがホロっとこぼすひとことが切なくて可愛い。
でもね、鈴ちゃんだってきっとあとニ、三年もすれば、涼太郎くんが焦っちゃうほど素敵な女の子になってると思う。それでまた、涼太郎くんのことを振り回してあげて欲しいな。きっとそのときは彼はまた難関大学への受験勉強で忙しいだろうけれど。
少年少女を描いた古川さんの文章は、いつもカルピスソーダのように甘くて爽やか。
そろそろ暑い夏の後半、ここ数日は雨ばかりでジトジトしているけれど、そんな湿っぽさを吹き飛ばしてくれる、青い海に流れる風のようなキラキラとした作品です。