18話.告白そして特訓再開

 澪さんにどこにいるのかの連絡をするが応答がなく、ならばと思って僕が向かった先はネットカフェだった。

 部屋に借りると僕はV Rゴーグルを被り、Bloom Lifeを起動した。

 前は毎日ログインしていたが、最近は数日に一度やるぐらいの頻度になってしまった、大好きなゲーム。

 このゲームが大好きになったのも全部澪さんのおかげだ。


 僕は急いで彼女がいるであろういつも待ち合わせしている広場に向かった。

 外に出ると今日はお祭りらしく、人が混み合っていた。

 これでは時間ロスだと建物の屋根を伝って、落ちないように走っていく、

 スタミナバーがなくなりそうになる頃には、広場に到着できた。

 大きな木の下まで行くと、アイテムを使ってスタミナ回復し、木を登り始めた。

 昔ならもっとゆっくりでしか登れなかっただろうが、今では中々のスピードで登れることができる様になっていた。


 これも澪さんのおかげなんだなと感謝しつつ、いつもの待ち合わせ場所に向かった。

 到着すると、彼女はいなかった。

 それもそうか、待ち合わせもしていないのにここに彼女がいるわけがない。


 一体どこにいるんだと空を見上げると、さらに高い木の上に見覚えのある紫色の尻尾が見えた。

 僕は回復しつつあったスタミナゲージを酷使して、上へと駆け上った。

 尻尾が見えた場所まで後少しだと思った瞬間、スタミナゲージが切れてしまった。

 この高さから落ちるにはゲームとしても流石に怖いと目を瞑ったが、何者かが落ちる僕の腕を掴み、引っ張り上げてくれた。


「ソウタ君、どうしたんだい? 今日はデートとか言ってなかったっけ?」


 聞き覚えのある声に僕は目を開けると、そこには澪さんがいた。


「み、澪さん……」


「それにしてもよく人族でここまで登ってこれたねー。落ちてたら死んでたよ?」


 澪さんは下の祭りの風景を楽しみながら、話しかけてくれる。

 いつもの澪さんだ。僕は気を引き絞る。


「あの澪さん……」


「どうしたんだい? あ、澪って名前ここではいいけど、下ではしっかりシズクって呼んでよね」


 確かにゲーム中にリアルの名前を呼ぶのは非常識だった。


「それはすみません。今日は大切な事を言いにここに来ました」


「おっ、遂に彩芽と付き合えたのかい?」


「違います」


「じゃあ何だろう? 分かんないや」


 首を傾げる澪さんに僕は溢れんばかりの想いを伝えた。


「澪さん、僕はあなたが好きです」


 数瞬の沈黙が訪れる。

 

「……君は彩芽が好きなんじゃなかったのかい?」


「いえ、彩芽さんは僕にとって憧れの人で好きではないということにさっき気づきました。僕が本当に好きなのは澪さん、あなたです」


「……それで?」


「あなたといるといつも楽しくいられる、馬鹿でいられる。よかったら僕と付き合ってくれませんか?」


 辺りは静寂に包まれ、僕の心臓の鼓動は早くなる一方だ。


「やだ」


 彼女は首を横に振った。


「え?」


「僕は強い人が好きなんだー。レイドボスを一人で倒せるぐらいの実力がないと僕とは付き合えないね」


「そうですか……」


 振られた。

 一人でレイドボス討伐なんて僕には不可能だ。

 遠回しに僕は無理だと言われてるんだ……。


 結局、僕は誰とも付き合うことなんてできないんだと落胆していると、澪さんが僕の肩を突く。

 顔を上げると澪さんがまじまじと僕を見て微笑えむと口を開けた。


「だからまた特訓だね」


 澪さんの頬は仄かに赤くなっている様に見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲームの師匠はリアルの師匠⁉ いたずら師匠による恋愛指導 @midorinoyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ