リトライ×オンエア

エピローグ

「おっはよー！」

　あれから一か月。俺はというと、以前と変わらず配信を続けていた。

　あの一件がきっかけで、登録者はついに十万の大台を超え、今では中堅みたいな立ち位置に立ってしまった。

　藤野さんも新たなライバーのマネージャーを兼任で任されたようで、最近は大忙しらしい。

　そして、もう一人。肝心の立川はというと……

「おはようございます」

「おはよう」

　見事復帰を果たしていた。とは言っても当時はかなり賛否両論だったが。それもそうだろう。一回宣言した引退を取り消したのだ。手放しに全員が喜ぶわけはない。

　だが、それでも立川は向き合った。批判にさらされても、折れなかったのだ。今では前と変わらない活動を行えている。コラボ配信だって増えた。前のような作り固めたキャラではなく、かなり自然体でできていると思う。時々あかりちゃんではなく、立川の性格が出てくるのは心配になるが。

「いやぁ、それにしてもいよいよだね」

「はい！」

　満面の笑みで立川は言った。

　本当に今日ほど特別な日はないだろう。騒動でかすんでしまったスリーディーのお披露目配信ができるのだから。時期的に大きな変更はなかったのだが、その間に起こった出来事が出来事だ。ずいぶんと待ちわびたように思える。

　それに、聞いた話だとスリーディー化も一度は中止の話があったらしい。それをどうしてもと藤野さんが頭を下げてくれたおかげで、こうして決行することができたのだ。本当に藤野さんには感謝してもしきれない。

　だからこそ、今立川の笑顔を見れるのが何よりもうれしかった。付き合っているわけではないが、今はこれでいい。

「よっし。そろそろ時間だけど、二人とも大丈夫？」

「もちろん」

「大丈夫です」

　あのときみたいな失敗はしない。その思いで、今度こそ彼女の横に並び立つ。

「おっし、んじゃ今日も頑張ろう」

「「はい！」」

　今日は忘れられない一日になる。隣に立つ立川と笑いあい、俺は確信した。そして。

「「スリーディーだー！」」

　ようやく見せることのできたスリーディー。だが、こんなところで立ち止まるつもりはない。ワンツーコンビなら、どこまでだって目指せるだろう。

沸き立つコメント欄とともに、俺たちは配信を続ける。

こんな日々がずっと続くことを願って。