二人の料理対決③

「今日作る料理は肉じゃが。先手はお姉さん」


 部長さんが、対決用に作ったメモを読み上げます。というか、「先手」って……。まあ、将棋部らしいといえばらしいのかな。


「食材は好きに使っていいからね。では、始め!」


「よろしくお願いします!」


 ペコリと僕たちに向かって頭を下げる死神さん。そして、意気揚々とキッチンへ。


「さて、解説の弟さん。どうなると思う?」


「いつから僕が解説に……。とりあえず、食べられる料理にしてほしいです」


 さて。死神さんを見守るとしましょう。何かあればすぐに助けに行けるように…………え!?


「あ、あの……シオンさん?」


「君、どうしたの?」


「その手に持っているのは何ですか?」


「何って……洗剤だよ。食材を洗わないと……」


 …………


 …………


 死神さん失格。







「き、気を取り直して、後手スタート!」


「お姉さんもまだまだね。洗剤で食べ物を洗っちゃいけないわ」


 食材を水洗いしながらドヤ顔を浮かべる先輩。死神さんは、僕の隣で「ムググググ」と唸っています。


「さて、じゃあ、ピーラーで皮をむきましょうか…………痛!」


 …………え!?


「せ、先輩、どうしましたか?」


「……どうしよう、血、止まんない」


 …………


 …………


 先輩失格。

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