二人の料理対決④
結局、料理対決は中止。用意した大量の食材を消費するため、僕と部長さんでそれぞれ別の肉じゃがを作ることに。
「部長さんの肉じゃが、おいしそうですね」
「君のもね。あ、お味噌取ってくれない? 隠し味に入れたいから」
「どうぞ。それにしても、部長さんの家では、肉じゃがにお味噌を入れるんですね。ちょっと興味が……」
「実は、バターを入れるっていう裏技もあってね」
「ええ!? バターですか!?」
ああ。なんと。まさか、一緒に料理の話をできる人が身近にいたなんて。部長さんとのつながりを作ってくれた先輩には感謝しかありません。あと、部長さんと初めて会うきっかけを作ってくれた死神さんにも。
「あ、よかったら、今度ボクと……って、あれ?」
不意に、部長さんの言葉が止まります。見ると、部長さんの後ろから一人の女性が抱き着いていました。その女性は、こちらにジト目を向けています。
「……せ、先輩、どうし……え!?」
僕の背中に軽い衝撃。腰に回される女性の腕。その女性は、部長さんにジト目を向けています。
「「二人とも、イチャイチャしない!」」
ええ……。
死神さんに抱き着かれた僕。先輩に抱き着かれた部長さん。僕たち二人は、そろって困惑の表情を浮かべるのでした。
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