第140話 じゃあね。マ……お母さん

「さ、あなた。帰るわよ」


「…………」


「もう、いつまで落ち込んでるの」


「…………」


「仕方ないわね」


 呆れたような表情を浮かべるお義母さん。その目の前には、無言でテーブルに突っ伏したままのお義父さん。最初に放っていた迫力は、一体どこに消えてしまったというのでしょうか。


「二人とも、この人もう限界みたいだから、連れて帰るわね」


「えっと……またいつでも来てくださいね。お義母さん、お義父さん」


「じゃあね。マ……お母さん」


 どうやら、まだ死神さんは怒っているようです。別れの言葉をかけてもらえなかったお義父さんの方から、「ガーン!」という音が聞こえたような気がしました。


「あらあら。じゃあ、またね」


 そう告げて、お義母さんはパッと姿を消してしまいました。まるで、そこには何もなかったかのよう。お義父さんの姿もありません。


「……行っちゃいましたね」


「……ごめんね。パ……お父さんが、ひどいことして」


「いえ、別に。むしろ、今日、お義父さんと話ができてよかったです。いろいろ、考えられましたし」


 僕の頭の中には、お義父さんから受けた百個の質問が、次々に浮かび上がってきていました。僕は、これから死神さんとどうなっていきたいのか。死神さんとどう接していけばいいのか。そして……。


 今、変えなければならないことは何か。

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