第138話 お義父さん、今、何を?

 お義父さんは、無言で僕を見つめていました。今、お義父さんが何を考えているのか、僕には全く分かりません。


 僕の発言からどれくらいの時間が経ったのでしょうか。一分? 十分? 一時間? いや、もっともっと長く感じられます。実際は、数秒しか経っていないのでしょうが。


「……ふっ」


 突然、お義父さんの口角が少しだけ上がりました。


「まさか、そんな答えが返って来るとはな。てっきり、『必ず守ります』と言われると思っていたよ。まあ、しかし……そうだな。君の考えは正しい」


 うんうんと頷くお義父さん。部屋の中の空気が和らいでいきます。


「君は人間。娘は死神。不安になるのも当然のことだ。だが、少なくとも、君は、娘を守る覚悟はあるのだろう?」


「……はい」


「それなら、いい。まあ、私の愛する娘は、誰かに守ってもらわなければならないほど軟弱ではないがな。それに、万が一、娘に危害を加えるような奴らがいれば、私や妻がそいつらを……フフフ」


 お義父さんは、ニヤリと笑みを浮かべます。


 とてつもなく物騒なことを言われましたが……と、とにかく、何とかこの場は穏便に済みそうです。


「ありがとうございます」


 僕は、お義父さんに向かってゆっくりと頭を下げました。


「別に、お礼を言われるようなことではない。それに、君に聞きたいことは、あと九十九個残っている」


 …………ん?


「えっと……お義父さん、今、何を?」


「だから、まだ九十九個聞きたいことが残っていると言ったんだ。次は、君が、娘と健全な生活をしているかどうかということについてだが……」


 …………


 …………


 う、うわああああああああ!

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