第120話 これ、書いてくれる?

「…………」


「…………」


「……ふふ」


「…………?」


「あははははは」


 突然、お義母さんが大声で笑い始めました。その意味が分からず、僕の頭の中が、大量のはてなマークで埋め尽くされます。


「お、お義母さん?」


「あはは。ご、ごめんなさいね。ま、まさか、そ、そんな答えが返って来るなんて、お、思ってなくて。あはははは」







「ふー。笑い疲れたわ」


 そう言って、お義母さんは目じりを拭いました。


「……そんなに面白かったですか?」


「ええ。それはもう。これまで以上に、あなたとあの子の孫の顔が見たくなるほど」


「……何ですか、それ」


 そういえば、以前、お義母さんがこっちの世界にやって来た時も、同じような話をしていましたね。お義母さんは、どうしても、僕と死神さんとの間に子供を授からせたいようです。


 …………別に、嫌というわけではありませんが。


「あんまり手助けするのはあの子のためにならないと思ってたのだけれど。……ふふ。たまにはいいかもね。そういうのも」


 不意に、お義母さんがそんなことを呟きました。


「……? どういうことですか?」


 僕が尋ねると、お義母さんは、曖昧な笑みを受かべながら微笑みます。何かを隠していることは明白でした。


「別に、何でもないわよ。そうそう。これ、書いてくれる?」


 お義母さんは、そう言いながら、右手をぱっと開きました。その瞬間、手のひらに大量の光の粒が集まり始めます。それらはみるみる形を成し、一枚の紙になりました。

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