第114話 それは、自分で判断することよ

「そういえば、今日の部活は何がしたい?」


 昼食を食べ終えた先輩が、突然、僕にそう尋ねました。


「そうですね……。いつも通り、対局するだけでいいんじゃないですか?」


「そうね。そうしましょうか」


 そう言って、先輩は立ち上がります。これから自分の教室に戻る予定なのでしょう。


「……先輩」


「……どうかした?」


「今の僕は、ちゃんと前を向けてますかね?」


 本当にこのままでいいのか。僕にはもう死神さんを待つしかできないのか。もしかしたら、僕はまた自殺という道を選んでしまうのではないか。そんなことを考える度に、僕の心の中にある黒いものが、ますますその黒さを増していくのです。


 だからこそ、こんな情けないことを先輩に聞いてしまったのでしょう。


「…………」


 僕の言葉に、先輩はピタリと動きを止め、僕をじっと見つめました。そして、優しく微笑みながら、言葉を紡ぎます。


「それは、自分で判断することよ」


「自分で……ですか」


「そうよ。自分が前を向けてるかどうかなんて、人に聞いたって仕方ないでしょ。まあ、あんたがまた後ろ向きになった時はいろいろ教えてあげるわよ。」


「……はい。すいません。変なこと聞いて」


 僕は、ゆっくりと先輩に頭を下げました。


 おそらく、これが先輩の優しさなのでしょう。本当に助けが必要な時には全力で助け、そうでない時には、あえて軽く突き放して見守ってくれる。これまでいろいろと辛い経験をしてきた僕だからこそ、先輩の優しさはとてつもなくありがたいものに思えました。


「……さあ、そろそろ私は戻るわね。部活、ちゃんと来るように。遅れたら許さないから」


「了解です」


 ありがとうございますと心の中でお礼を言いながら、僕は、先輩の言葉に頷くのでした。

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