第113話 理不尽すぎます!

 翌日。学校の昼休み。


 自分の机でお弁当を食べていた僕。その前に、カサリという音をたてながらレジ袋が置かれました。顔を上げると、そこには先輩の姿。


「お昼、一緒にいいかしら?」


「……はい」


 そう返事をすると、先輩は、僕の机の前にあった椅子をクルリとこちらに向け、座りました。そして、レジ袋の中からサンドイッチを取り出し、ムシャムシャと食べ始めます。


「今日、ちゃんと来れたのね」


「……先輩のおかげです」


「私は何もしてないわよ」


 先輩は、特に表情を変えることもなくそんな言葉を口にします。


 何もしてないわけないじゃないですか……。


「……ねえ」


「何ですか?」


「あんたのそれ、おいしそうね」


 僕の弁当に人差し指を伸ばす先輩。その指の先には、豚の生姜焼き。


「……あげませんよ」


 これを取られてしまっては、お弁当のメインが無くなりますからね。


「じゃあ、トレードならどうかしら?」


「トレード?」


「そうよ。あんたの生姜焼きと、私のサンドイッチに挟まれてるこのレタスで」


「理不尽すぎます!」


 そのトレードはいくら何でもつり合いが取れていません。僕は、自分の弁当箱を抱え、先輩から遠ざけました。


「冗談よ」


 先輩は、そんな僕を見てクスクスと笑っていました。

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