第111話 ……それでも、かっこいいと思います
「……僕にできますかね?」
「何言ってるのよ。『できますか』じゃなくて『やる』の」
「……するべきこと、見逃さずにすみますかね?」
「ちゃんと前を見ていれば大丈夫よ。私が保証する」
腕組みをしながら、ニヤリと笑う先輩。一体その自信はどこから来るのでしょうか。
まあ、でも……。
「……ありがとうございます」
僕は、先輩にペコリと頭を下げました。
僕の心の中にあった黒いもの。それがほんの少しだけ無くなったような気がします。道を示してもらうというのは、こんなにも嬉しいことだったんですね。
「……どういたしまして。ま、困ったらいつでも私を頼りなさい」
そう告げながら、先輩は、ドンッと自分の胸を叩きました。
「……今の先輩、すごくかっこいいです」
「ふっ、そうでしょう。これが先輩力ってやつよ。……っていうのは冗談で、本当は、昔、私が落ち込んでた時に、部長に言われた言葉をそのまま言ってるだけなんだけどね」
先輩は、笑みを浮かべながらペロリと舌を出しました。まるで、いたずらが成功した後の子どものようです。
「……それでも、かっこいいと思います」
「な、なによ。今日はやけに素直に褒めてくれるじゃない。そんなに褒めても何も出ないわよ」
先輩の顔には、ほんのり朱が差しています。そんな先輩を見て、僕はふふっと笑ってしまうのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます