第104話 これだけは、覚えていてほしいんだ
「……ぷは!」
死神さんの顔が、ゆっくりと離れていきます。
「……えっと……し、死神……さん?」
「ニヒヒ。……君と、こんなことするのは初めてだね」
頭の中が、先ほど以上にはてなマークでいっぱいになる僕。そんな僕に向かって、死神さんは目に涙を溜めたまま微笑みます。
「……次は、いつできるかな? ……って、こんなこと考えても仕方ないよね。だって、もう、私は……」
死神さんが何を言っているのか、僕には全く分かりません。とにかく体を起こそう。そう考え、僕は自分の体を……。
「……あ、あれ?」
一体僕の体はどうしてしまったのでしょうか。まるで金縛りにあったかのように、ピクリとも動かすことができません。
「ごめんね。さっき、キスした時、君の体をしばらくの間動けないようにしたの。死神の力の一つでね」
「なん……で……」
「だって、君に抱きしめられでもしたら、私、本当に耐えられなくなっちゃうから」
「だ…から……どういう……」
先ほどから、よく分からないことばかり起こります。ですが、これだけははっきりと分かりました。今から起ころうとしている何かは、僕にとって、不幸以外の何ものでもないということ。
「君が次に目を覚ました時、私はもういないけど……。これだけは、覚えておいてほしいんだ」
そう言いながら、死神さんは、僕の額に手をかざします。すると、僕のまぶたが急激にその重さを増しました。例えるなら、まぶたの中に鉛が入っているかのよう。同時に、意識が徐々に朦朧としていきます。
「これからもずっと、私は、君のこと…………」
「大好き……だよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます