第103話 君……ごめんね

 死神さんの様子がおかしくなって一週間。いまだに、死神さんは、その理由を語ってはくれません。僕は、死神さんが少しでも元気になるようにと、晩御飯に死神さんの好きなお肉料理を作り続けました。事情を知らない僕ができることなんて、それくらいですからね。


「……今日は一段と遅い」


 23時50分。そろそろ日付が変わろうとしています。死神さんが帰ってくるまで起きていようと思っていましたが、瞼の重さが限界です。


 部屋の電気をつけっぱなしにしたまま、僕は、ベッドに仰向けに倒れこみました。


「死神さん……」







 ギシギシ。


 妙な音。そして、真上にある妙な気配。僕はパッと目を開きました。


「…………え!?」


 一瞬、僕の目に何が映っているのか、理解できませんでした。夢かとも思いましたが、どうやらそうではないらしいです。僕の頬に落ちる水が、しっかりとその感触を伝えてくれたのですから。


「しに……がみ……さん……?」


 それは、大粒の涙を流す死神さんの顔でした。


 死神さんは、仰向けで寝ている僕の上に覆いかぶさり、ジッと僕を見下ろしています。まるで、もう逃がさないと言っているかのよう。


 僕の頭の中は、大量のはてなマークで支配されていました。


「君……ごめんね」


 死神さんの目からポロポロと落ちる涙。それが、何度も何度も僕の頬を濡らします。


「えっと……何……言ってるんですか……?」


「本当に……ごめんね」


「だから、何言って…………んむ!?」


 僕の言葉は、死神さんによってさえぎられてしまいました。


 狂おしいほどの甘い香り。ゼロ距離にある死神さんの顔。そして唇に触れる、柔らかい何か。


 …………え!?


 ………………えええ!?


 ……………………えええええ!?

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