第102話 明日こそ……
「……おいしい」
死神さんが、煮物に入っている鶏肉を食べながら、小さくそう呟きました。
「それはよかったです」
「…………」
「…………」
「……聞かないの?」
不安そうな表情を浮かべた死神さんが、まっすぐに僕を見つめます。
「……何をですか?」
「その……私に何があったか……」
「……まあ、聞きたいのはやまやまですけど、言いにくそうでしたから。言えるようになったらでいいですよ」
誰にだって、言いたくないことの一つや二つあります。先ほどの、死神さんの様子。あれは、どう考えても、何があったかを言いたくないという反応でした。それを無理に聞き出しても、死神さんが辛くなるだけです。
僕の言葉に、死神さんは、左手をキュッと握り、自分の胸に押し当てました。
「……ありがとう」
そう言って、優しく微笑む死神さん。ですが、多少無理して笑っているようにも見えます。
これ以上、この話題を続けるのはよくありませんね。
「いえ。……さて、僕はそろそろ寝ますね。明日も学校なので」
「うん。おやすみ。後片付けはしておくから」
「お願いします。おやすみなさい、死神さん」
僕は、ベッドに横になり、目をつむりました。テーブルの方からは、死神さんが、食事をする音が聞こえてきます。
死神さんが傍にいる。それだけで、僕の心は穏やかでした。
しばらくして、僕の意識が朦朧としてきた頃。
「明日こそ……」
不意に、そんな言葉が聞こえました。ですが、その意味を考えられるほど、僕の頭は機能していませんでした。
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