第43話 そろそろ本題に入りたいんですけど……

「でも、つい最近まで一人暮らしだった男の子の部屋に、そういう本がないっておかしいじゃない」


「私もそう思ってたんだけどね……。やっぱり、どこ探してもないんだよ」


 テーブルを挟んで会話する死神さんと先輩。僕にはよく分かりませんが、女性ってそっち系の話もお手の物なのでしょうか。いや、まあ、それは別にいいとして……。


「男の子が全員そういう本を隠し持ってるっていうのは、都市伝説だったのね」


「好み、知りたかったなあ」


「あの……」


「「なに(よ)?」」


 僕の言葉に、二人がそろって顔を向けました。


「えっと……。そろそろ本題に入りたいんですけど……」


 一体だれが想像できたでしょうか。『僕がそういう本を持っているか』談義がここまで長く続けられるなんて。ですが、僕としては、そろそろちゃんと話し合いをしたいのです。


「それもそうね……」


 先輩は、そう言いながらゆっくりと頷きました。そして、ビシッと居住まいを正します。


「お姉さん。一つ、お願いがあるの」


「……一応、話は聞いてるよ。弟を将棋部に入部させたいんだって?」


「そう。今日の昼に交渉した時、お姉さんの晩御飯を作らないといけないから将棋部には入部できないって言われたの。でも、私としては、どうしても彼に将棋部へ入部してほしい。だから、お願い。彼が、将棋部に入部するのを許して」


 先輩は、死神さんに向かって深々と頭を下げました。


 そんな先輩を見て、僕はあることを思ったのでした。


 先輩は、どうしてそこまで僕を将棋部に入部させたいんだろう……。

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