間章 僕と死神さんの非日常
第26話 ニヒヒ。やったね!
死神さんとの同棲が始まって、二週間が経過しました。
「ただいまー」
「死神さん! 突然後ろに現れるのはびっくりするからやめてっていつも言ってるじゃないですか!」
「えー。この方が早いのにー」
「駄目です。つい先日、そのせいでおかずを床に落としちゃったの、もう忘れたんですか?」
「むー」
唇を尖らせながら、死神さんは玄関へ。そして、扉を開けて外に出て行ってしまいました。
「……ただいまー」
不貞腐れたように入ってくる死神さん。別に、やり直しを要求したわけではないのですが……。
「おかえりなさい。今日もお仕事お疲れさまでした。ご飯、できてますよ」
僕の言葉に、死神さんの目がキラキラと輝き始めます。先ほどの不貞腐れた表情はどこに行ってしまったのでしょうか。
「やった! 今日は何かなー?」
「スーパーで鮭が安かったので、塩焼きにしました」
その瞬間、死神さんは、また唇を尖らせます。表情がコロコロ変わって面白い……なんて感想は、今はもう出てきません。慣れというのは、本当に恐ろしいものです。
「……お肉じゃないの?」
「はい」
「なんて言っといて実はー?」
「鮭です」
ニッコリと笑いながら、僕はそう告げます。ここで引いてしまっては、せっかく作ったおかずが無駄になってしまいますからね。
「…………」
「…………」
「……明日はお肉にしましょうか」
ま、まあ、同居人の希望を叶えるのもたまには必要ですよね。そうです。別に、死神さんを甘やかそうとか、死神さんの笑顔をもっと見たいだとか、そういうわけではないのです。本当に。
「ニヒヒ。やったね!」
死神さんは、ガッツポーズをしながら、いたずらを成功させた子供のような笑みを浮かべていました。
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