第23話 ど、同棲……?

「上司に賄賂って、やっぱり死神世界の秩序は……じゃなくて!」


 僕は、テーブルをバンッと両手で叩きました。手がヒリヒリしましたが、今はそんなこと関係ありません。


「ど、同棲……?」


「うん」


「同じ性別の……」


「それは同性」


「同じ一族っていう……」


「それは同姓」


「えっと……一緒に住むっていう」


「おお、今度は正解。その同棲」


 死神さんは、パチパチパチと僕に向かって拍手をしました。


「これから私、君の大切な人になるんだから。同棲するのが手っ取り早いよね」


「いや……いやいやいや。さすがに急すぎます。いきなり同棲なんて……」


 マイペースすぎる人だとは思っていましたが、まさかここまでとは……。そもそも、僕たちは、まだ会ってから日も浅くて……。って、その言い方じゃ、何回も会って親しくなれば同棲OKみたいな……。


「……だめ?」


 死神さんは、首を少し傾けながら僕をじっと見つめます。その赤い瞳は、ウルウルと潤んでいました。


「…………」


「…………」


 僕たちの間に、沈黙が流れます。僕の口からは、なかなか言葉が出てきません。それは、僕の心にまだ小さなしこりが残っていることを意味していました。本当に、これでいいのかと。再び、僕は苦しむことになるのではないかと。


「えっと……もし、だめだったら……」


 長い長い沈黙を破ったのは、死神さんの声。その唇は、微かに震えていました。


 ……ああ、そうか。もう、答えなんて、最初から決まってる。


「僕は……」


 死神さんの言葉を遮るように、僕は言葉を紡ぎ出します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る