第20話 そう、思っていたのに……

 いろんな人から虐げられました。


 親戚たちからは陰口を叩かれ続け。小、中のクラスメイトたちからはひどいいじめを受け。


 好きな人がいなくなりました。


 小さい頃、僕を気遣ってくれたおじさんが病気で亡くなり。僕の高校進学後すぐ、両親が事故で亡くなり。


 僕は、不幸のどん底にいたのです。とても暗くて、苦しくて、いるだけで吐き気を催すような、そんな場所に。


 両親が亡くなった時、僕は思いました。ああ、もう楽になりたいと。


 僕がこれから生きていくためのお金だけはありました。両親の生命保険や遺産のおかげです。せっかく両親が残してくれたものなのだから、それらを使い切ってしまってから死のうとも思いました。ですが、もう僕には、それをするだけの気力も体力もありませんでした。


 すぐ自殺しよう。そして楽になろう。そう、思っていたのに……。


 死神さんは言いました。僕の大切な人になると。僕を虐げないと。僕の前からいなくならないと。僕に幸せを届けると。


 どうして会ったばかりの死神さんがそんなことを言ったのか分かりません。僕に将棋で勝ち逃げをさせないためらしいですが、そこまでする必要は果たしてあったのでしょうか。分かりません。本当に、分かりません。


 でも、これだけは分かります。


 僕の心が、とてつもなく温かい何かで満たされたということが。


 僕の目から出た涙が、死神さんのローブをぐちゃぐちゃに濡らしていきます。ですが、死神さんは、特に気にする様子もなく、ずっと僕を抱きしめたまま頭を撫で続けていました。


 一体どれほどの時間が経ったのでしょうか。死神さんの温かさと花のような甘い香りに包まれたまま、僕の体は自然と眠りに落ちていきました。

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