第16話 呼んだ?
死神さんが去って三日。時刻は二十三時五十五分。もうすぐ、日付が変わろうとしています。
結局のところ、僕はこの三日間、虚無的な生活を送っていました。ただベッドに横になり、朝から晩まで寝ていました。お腹がすいた時は、適当なお菓子で空腹を満たしました。
朝起きる。朝食を作って食べる。身支度をする。学校に行く。授業を受ける。帰宅する。晩御飯を作って食べる。シャワーを浴びる。寝る。そんな当たり前の生活は、すでに僕の手から零れ落ちてしまっていたのです。いや、この表現は語弊がありますね。僕の手から零れ落ちたのではなく、僕が零してしまったという方が正しいでしょう。やろうと思えばできたはずなのに、それをしなかったのは、他でもない自分なのですから。自殺の決意を固めてしまった僕にとって、今までと同じ当たり前の生活を送ることは、何の意味も持っていなかったのです。
電気を点けっぱなしにしたまま、ベッドに横になっている僕。六畳一間。アパートの一室。今までこの部屋を借りた人の中で、僕以上に天井を見つめ続けた人はいないに違いありません。
特に何かを意識することもなく、僕は、寝返りを打ちました。僕の目に飛び込んできたのは、死神さんが置いていった将棋盤と駒袋。テーブルの中央に置かれたそれらは、三日前の出来事が、ただの白昼夢や幻覚でなかったことをありありと示していました。
僕はこれからどうなってしまうのでしょうか。早く自殺したい。早く死にたい。そして、早く楽になりたい。でももし、死神さんが戻ってこなかったら……。
そんな不安が、僕の口を無理やり動かしてしまったのでしょう。
「死神さん……」
「呼んだ?」
死神さんが、僕の目の前に突然現れました。
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