第7話 死神世界の秩序は一体どうなってるんですか……

「それでね。今回の私の仕事は、死んじゃった君の魂を回収することなんだ。けど、魂になっちゃったら将棋ができないんだよね。せっかく、全国大会準優勝クラスの子が目の前にいて将棋ができないなんて、そんなのもったいないよ!」


 死神さんは、上半身をテーブルの上に乗り出しながら、力強くそう言いました。その赤い瞳は、ルビーのようにキラキラと輝いています。


「えっと。そもそも、死神さんが将棋を指すってことに違和感があるのですが。漫画とかアニメでも、将棋を指す死神なんて見たことないですし」


「まあ、死神にも意思や個性はあるからねー。何かを好きになっちゃうのは、仕方ないんだよ。私の場合は、将棋が大好きってわけ。ちなみに、私の知り合いにはひどいお酒好きの死神がいてね。お酒を製造してる会社の社長が死ぬ前に、大量のお酒を自分に貢がせたんだとか」


「死神世界の秩序は一体どうなってるんですか……」


 僕の言葉に、死神さんは、ハハハと乾いた笑いを漏らしました。


「と、とにかく、どうかな? 死ぬ前に、私と将棋しない?」


 そう告げながら、死神さんはパッと手を開きました。先ほど鎌が現れた時と同様に、手のひらに光の粒が集まり始めます。それはみるみる形を成し、将棋盤と駒袋になりました。


「…………」


「…………」


「……一回だけですよ。それが終わったら、僕、自殺するんで」


「やった!」


 嬉しそうに微笑む死神さん。それは、思わず吸い込まれてしまいそうなほど魅力的な笑みでした。

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