第3話
外気温は40度を超えた。ここまで来るとセミも鳴かなくなる。道路からたちのぼる陽炎はアスファルトを溶かしているようにみえた。
大樹の陰に身を寄せる。さぁー、と枝葉が揺れた。ふと顔を上げると、隣に女性がいた。
「暑いですね。」
「そうですね。」
と、挨拶を交わした。
「なつという季節をご存知ですか?」
「知りません。」
「今日みたいな暑い日が続く季節を昔は夏と言ったそうですよ。」
「それは、嫌な季節ですね。」
そう答えて、私は遠くを眺めた。相変わらず道路からは陽炎がたちのぼり、嫌気がさすほどの太陽の光は眩しく街を照らしている。
隣に目を戻すと、彼女はどこかに消えていった。音も無く消えた彼女の顔を、私は思い出せない。
夏休み あきかん @Gomibako
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