第2話

何も来ないはずの港に船が着く。


その船は、ひとりの乗客を降ろして水平線へと消え去った。


忽然と降り出した夕立のように、その女はいきなり現れたのだ。


夏休みサマー・バケーション。ここもそうなのね。」


女の名は、警察発表によるとニキータである。


偽名なのか、愛称なのか。それすら定かではない。


ニキータ第1の犯行。10時23分。


その日、収穫祭が行われていた。


凶行は瞬く間に行われる。


彼女に1人の男が話しかけた。


ニキータの振りかざしたナイフは、燦々と輝く太陽に照らされて白く光った。


その余りの自然さに、とっさには何が起きたかわからなかった。


それが舞台の演技なのか、現実なのかさえ。


刺された男は、皮膚が割れ火に孵った。



*********



かつて、この町は1度死んだ。


漁業の町として栄えたこの土地に、山脈から噴き上げた灼熱の焔が降り注ぎ焼き払った。


「わたしたちは世の光である…」


と、町議員がニキータに語る


「もう遅い。そんな事をしたところで」


暗闇のなかで焔へと変わっていく町議員


夏休みサマー・バケーションは終わらんよ。」


焔の明かりで照らされたニキータの顔はわずかに微笑んでいた。







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