第104話 たまにダンジョン 

 今日は久々のダンジョン攻略。


 なんか伯爵になってから雑務が多い。

 開拓に必要な物資を運んだりしてたのもあるけど。

 補佐官たちやメイヤーさんがいなかったらどうなってたのかわからない。

 移住を募る方法とか僕にはわからないし、経営なんかもよく分からない。

 何もかもわからない、では騙されるだけなので一応座学でいろいろとスタン侯爵邸の教師から教えてもらっている。

 結構時間かかったが、聞けば分かる程度までは学べたと思う。



◇◇◇



 ミストラルさんといっしょにロックドライブラリーの60階に到達すると、ボスの七曜の魔女が待っていた。

 ちなみにレベルは事前に33まで下げている。

 周りに宝石は浮いていない。


「『永遠の回廊』への挑戦を希望する者か?」


「はい」


「では、力を示せ」


 そういうと、七曜の魔女の周囲に宝石が現れる。


「エレメンタルアロー」


 と七曜の魔女は抑揚のない声で呟き、こちらに攻撃してくる。

 七つの宝石からそれぞれの属性を帯びた魔法の矢が飛んでくる。


「マジックバリア!」


 こちらも目に見えない結界を張って防ぐ。

 モンスターハウスのときと違って、威力はあまりない。

 それでも、ミストラルさんが食らうとヤバい威力ではある。


「闇火術、ヘルファイア」


 紫色の炎がこちらに向かって放たれる。

 これもマジックバリアで防ぐ。


「火水術、ブレイジングブリザード」


 熱い氷がこちらに吹雪いてくる。


 さっきから七曜の魔女が繰り出しているのは、独特の複数属性魔法だ。

 僕にもできるが、消費MPの割に威力はいまいちだ。

 また複数属性攻撃をしてもダメージ効率は重複せず、最もよく効く倍率のみが優先されるから最初から一番効く属性で攻撃すればいい。

 どれが効くかわからない初見の敵に弱点を探る時に、という用途なら使えなくもない。

 そもそも複数の魔法を同時に発生させて、しかもそれを混ぜること自体がちょっと難しいのだが。



 今回も魔法剣でオーラブレードを発動し、斬りかかる。

 盾になりにきた宝石もろとも七曜の魔女は真っ二つとなり、無言で消えていく。

 後に残ったのは手のひらサイズの虹色の鍵だけだ。

 さすがにモンスターハウスの時ほど強くなかった。




 一度ダンジョンを出て、もう一度60階直行。


「『永遠の回廊』への挑戦を希望するか?」


「いいえ」


「そう。ならかかってきなさい」


 今度は七色の宝石が出てこない。

 使ってくる魔法も複合魔法ではなく、単体属性の魔法だ。

 心なしかあまり威力もないようだ。


 というわけで、ただのオーラブレードで斬ったらやはり無言のまま消えていった。

 あとに残ったのは魔石と、青色の丸い珠だ。



 永遠の回廊に挑む、と答えた時の七曜の魔女のほうがさっきよりも強かった。

 青色の丸い珠もそれなりに魔力の蓄積を感じられるが、賢者の石ほどではない。


 どうやら永遠の回廊に挑むかどうかでボスの強さが変わるらしい。

 S級ダンジョンは、A級までと違ってあまり資料がない。

 今までのS級冒険者達もあまり資料を残していないからだ。



 永遠の回廊の場所も諸説あるが、はっきりとわかっていない。

 いろいろ考察本が出ているが、空に浮かんだ島にある、とかトンデモ本も出ている始末で、面白おかしくいじり倒されてるのが現状だ。



 S級ダンジョンのボスが永遠の回廊に挑むかどうか聞いてくるくらいだから、実在はするのだろう。

 だが、それ以上のことはわからない。



 さらにもう一度、ダンジョンを出てから60階に転移し直して、今度は永遠の回廊に挑むと答えて再度撃破する。

 今度は何も落とさなかった。

 虹色の鍵は一回きりのドロップのようだ。

 ただ、ちゃんと経験値は入ってレベルは上がった。



 ダンジョンのボスは何度でも復活する。

 それについてクラウディアさんに聞いたことがある。

 ダンジョンは、その土地の魔力が長い年月をかけて凝縮されてできたものらしく、一度形成されて安定すれば半永久的に存在するらしい。

 ボスが倒される度にわずかにダンジョンが縮むが、周囲の土地の魔力を取り込んですぐにボスも再生するそうだ。

 出来たばかりのダンジョンは、安定する前に人知れず消えていくことがほとんどだが、消滅せずに時間が経過するか、【ダンジョンマスター】が接触すればダンジョンが安定する。


 モンスターハウスやスタンピードは、ダンジョンの規模に合わない魔力が溜まると、それを魔物の形にして外に吐き出す防衛反応のようなものらしい。

 全然魔物が討伐されないと魔力が溜まりすぎるのだ。

 稀に溜まりすぎた魔力によりダンジョン自体がより強くなることもある。

 規模も拡大して中にいる魔物も強くなる。

 いわばダンジョンのランクアップだ。

 それも滅多になく人の短い一生だと目撃することはないそうだ。

 この場合、スタンピードは起きない。


 そんなことを思い出していると、エリアから連絡がある。


(緊急事態よ。ミストラルを連れてすぐに王宮へ来て)






◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


<短編予定>こちらもご覧ください。

堕ちた最強英雄のやり直し~クズどもが何でこんなに弱いんだよ、仕方がない助けてやる

https://kakuyomu.jp/works/16817330655806429324/episodes/16817330655806802930

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る