仏門から還俗し、24歳で帝位を継ぐこととなった花琉帝(かりゅうてい)。その傍らには常に、彼が封じられていた寺より連れ来た少年、斎(いつき)が在る。武官と蔵人を兼任し、帝に寵愛される斎は「枸橘の君」と呼ばれるひとかどの人物となっていたが……実は女子であることはすでに公然の秘密であったのだ。
女子でありながら男子として帝を守ろうと誓った斎さんですが、帝の最重要課題は子を成すこと。だからこそ揺れるのですよ。自分の中の女心と、貴族の娘なんかじゃない身分の差の狭間で。
ちなみに彼女は一度、帝の求愛を突っぱねています。そして今は帝に世継ぎを成すため妻を娶るよう進言しなければならない立場でもあって。彼女を追い立てていく著者さんの筆、憎らしいほどすばらしいんですよ!
そして! その果てに勃発する、誰より頑固な斎さんと誰より直向きな帝による「宮中妻問い三番勝負」! それはもうドラマチックなのです。
主従の絆がどのように恋のさだめと結び直されるか、ぜひあなたの目でご確認ください。
(「縦から始まる主従の関係」4選/文=高橋 剛)
雅な筆致と丁寧な時代考証、個性的でいとおしい登場人物たちによって織られた、さらっと読める平安時代風恋愛ストーリーです。
雀のように素直で元気で愛らしい男装少女「斎」と、不遇な育ちから一転、帝の座へ即位することとなった「花琉帝」の、ちょっとラブコメ風味な恋愛勝負となっております。勝負? ええ、タイトル通りに勝負でしたね!
全体の長さも短編の域ですし、テンポ良い展開とわかりやすい人間模様、魅力的な人物たちに引っ張られて、あっという間に読めると思います。読み進めていくうちに、二人の幸せを願う気持ちが強くなっていくことでしょう。
年齢、性別問わず、誰でも楽しめる物語です。ぜひご一読ください。