おかしい・・・確かに私、転生したよね!?
さくっと自分を自分で終了させてみて思ったんだけど、
やっぱりちょっと気が引けてきた。
だって親よりも先に死んだんだから。
まぁ、自分が悪いんだけど。
ごめんね、こんな親不孝で。
でも生きてるほうがよっぽど親不孝だと思ったんだよ。ゆるしてマミー。
そしてパピー。
っていうか、死んだんだからさっさと転生できるはずだよね?
あ、そうか・・その前に神様みたいなのに会うんだよね、きっと。
・・・でもいないんだけど。
どこに行けばいいんだろう?不思議な真っ白な空間にたった一人の私。
一人ぼっちなのをいいことに自分が転生した後の自分を口にだして想像することにした。
「まず、美少女でコミュ力化け物はもちろんでしょ?強くて魔力とかその世界で一番多くて、魔法が使えて、お金とかに困らないといいなあ。
とっても綺麗な見た目に反して凄く強いから、並みの男じゃ太刀打ちできない・・みたいな。
あ、それで!勇者より強いのがいいなあ。
むしろ私が勇者もあり!
美女達あつめて巨大ハーレム築き上げたいな~。
私も女だけど、〇〇様~って言われたい・・!
しかもいいところのお嬢さまスタートがいいなあ。
ああああ、楽しみ!はよ神様こいやあ!
・・そうだ!!それなら髪の毛はブロンドがいいよね!!おっぱいもぼいんでさあ!
ああ、夢膨らむなあ・・・」
『おっさんよりおっさんしとるのぉ。』
「でたな神様!!!」
『でたなとかって・・・。まぁいいけど。その神様に対する態度なんとかならんかのぉ?』
「あー。ずっとコミュ障だったし。人への接し方とかわかんないもん」
『じゃあもう少しきょどったらどうじゃ?』
「それはないかな。だって、あなた神様だし。人ならそうなるけど神様じゃあそうはならないかな。で?転生でしょ?私」
『うむ。そうなのじゃが・・転生先の都合での・・ちょっとややこしいことがあってな・・』
「え?そんなのどうでもいいから!さっさと転生させてよ!さっき言ってた内容でよろしくね!」
『いや。それはできなくての・・』
「え?神様ジョーク?まぁいいから、さくっとやっちゃって!あとで状況は把握するからさ」
『本当にいいのかの?』
「いいからいいから!」
『そうかの・・文句は受け付けんからの』
「ないよ、そんなの!早く!」
『仕方ないのぉ・・。』
その神様が持っている杖のようなもので私をこつんと軽く小突くと
たちまち私はまぶしすぎる光に包まれて目が痛くなり目をつぶった。
気が付いたときには私は真っ暗な部屋の中だった。
うっすらと目を開けると、すべての家具が暗い色合いで合わせられた所謂、
ゴシック調の部屋が私の視界に飛び込んできた。
目を疑う私。
しかも、心なしか私の視線は子供にしては高すぎる。
大人としてもやや低めだろうか。
だとすると、私は転生というよりは憑依に近い状態にあるのだろうか?
・・ならばこの人物は誰だというのだろう。
鏡を見ようと横になっていたベッドから這い出て、鏡を探す。
しかしどこにも見当たらない。
ここには何もないのだ、自分を映せるようなものが。
「ない!!!ない!!!!」
とんでも美少女ならば毎日のように見るものだと思うのに、それをするための道具がない。
ドレッサーも無論、ここにはない。
これだけのいい部屋を持っていれば普通は侍女がいるはずだし、
その侍女がヘアスタイルをなんとかしてくれるものでしょ?
そうしたらそこにあるんじゃないの?鏡とかって。
なのにここにはないのだ。
「もしかして・・もしかするかも・・。」
自分の顔は自分で見たくないほどひどいものなのかもしれない。
可能性はある。これだけ探してもないのだから。
その時だ。
部屋のドアがノックされた。
「え!?あっ、どうぞ!!」
思いっきり声が上ずった。
これでは不審者ではないか。
『あら、お嬢さま。もう起きてらしたんですね。おはようございます。』
とびきり可愛い侍女がやってきた。
ワゴンの上には暖かそうな食事。
朝ごはんだろうか。
「え、ええ・・。」
『今日は旦那様が狩りに出かけられるそうですよ。お嬢さまはいかがなさいますか?』
「・・・え?狩り?」
『ええ。旦那様のご趣味ですから。人を狩りにいくのは何よりも楽しいのだとか。』
「え・・・?人・・?え・・?あ!そうだわ!私、鏡が欲しいのよ!どこにあるか知ってるかしら?」
『え!?お嬢さまがすべて捨てろとおっしゃっていたのでお屋敷にはありませんよ。・・あんなに鏡は嫌だとおっしゃっていたではありませんか。』
「やっぱり・・。・・・いいわ、私たまには見たくなったの。自分の姿を。鏡をここに持ってきて頂戴。」
『・・今すぐは難しいので、私の身支度用でよければありますが・・』
「それを貸して!」
『かしこまりました。』
彼女は少し待っていてくださいといって部屋を出て行ったかと思うと、すぐに戻ってきて小さめのコンパクトミラーを私に手渡してきた。
部屋の隅に移動してじっとしている彼女に、私は少しだけ視線を送ると、いっきにそのミラーを開いた。
しかしそこに映ったのはなんてことはない、黒がよく似合う美少女だった。
なんでこれで鏡が嫌なのだろう?これなら毎日でも見ていたいはずだ。
「ごめんなさい、私・・なんで鏡が嫌だと言ってたかしら?」
鏡を見ながらそう侍女に声をかけると、侍女はおどおどしながら言葉を口にした。
『お嬢さま・・覚えていらっしゃらないのですか・・?』
「え?」
『お嬢さまのお兄様にあたる方にそれはそれは愛されて育ったお嬢さまは、お兄様のことをうっとうしいといって、お兄様が好むこの顔なんて見たくないと言っていたではありませんか。』
「お兄様?いたの?」
『記憶にすらないのですか!?』
「え・・っと・・。」
『どこかやはり昨日のことで記憶が・・。お医者様をおよびしましょう!すぐにでも!』
「えっと・・?そんなことしなくてもいいのよ?元気だし。」
『そんなことありません!昨日あんな高いところから降ってきた本がお嬢さまの頭に当たりまくっていたんですよ!?大丈夫なわけがなかったんです!!』
「はぁ・・?」
私はきょとんとしたまま、まぬけな声を出す。
そんなことがあったとは。
しかしそれならば記憶がないのも納得のいくことなのだろう。
まもなくして主治医なるものがやってきてあれやこれやとみてくれた結果、
私は記憶障害があるとされた。
もちろん、それもそのうちよくなるかもしれないといってこれ以上のことはできないといって出て行った。
・・・だとすれば、この体の主人はその本の大量落下事件によって運悪く命を落としてしまったってことなのかな。
だったら、私がそこに入り込んで憑依する形で転生したってことになる。
・・それなら私の立ち位置や身分、どういう人間だったのかが気になるところだ。
「・・問題は山積みね・・」
『他人事ですね、お嬢さま。』
「え?そんなことないわよ!・・でも・・私、自分の名前もわからないのよね。」
『・・それは本当ですか・・?お嬢さま・・・・。』
「ええ・・。教えてくれる?私について。」
『もちろんです。』
そこから私は侍女に細かくいろんなことを教えてもらった。
私の名前はフィオーラ・カルディアーナというらしい。
カルディアーナ家は代々魔王の家柄だそうだ。
つまり、私は魔王の娘なのだそうだ。
どうりで黒がよく似合うわけだ。
しかし人を狩りに行くのが趣味だと言っていた父親といい、
魔族というのはやはり野蛮なんだと思い知った。
っていうか、人ですらないってことじゃん!
あ・・こんなの聞いてない・・。
・・そうか、何も聞かずに転生したから・・・私のせいじゃん・・・。
無論、魔法属性は闇。
美少女であるけれどハーレムは難しそう。
できるとすれば見苦しい魔族の軍団くらいだろう。
嫌だな・・見苦しい。美女だけで形成したかった・・。あんまりだ・・。
聞いとけばよかった・・。もっとちゃんと・・話を聞けばよかったよ・・。
いろいろ聞いたけど、大事なことといえば、私にはたくさんの許嫁がいるということだ。
否、正確には候補だけど。
その許嫁候補と面識があったけどそれぞれ何度もあってるわけじゃないから興味もなさそうだったということ。
これといって誰にも興味がなさそうなクールな人格をしているということ。
そして、この侍女。
カルエラというらしいが、私は彼女をエラと呼んでいたらしい。
エラとはよく話し、よく笑っていたようだ。
心を許している数少ない者だったのだろう。
さらに、執事もいるらしい。
今は出かけているらしいが、とんでもなく美形なのだそうだ。
しかしその美形からはおよそ予想もつかない毒舌のオンパレードでまともに会話できるのは私だけだったという。
エラですら彼は苦手だというのだ。
ちょっと会うのが楽しみだと思った。
外に目をやると、お屋敷らしい庭が広がっていた。
色は暗かったけど。全体的に。
なんていうか・・・植物が毒持ってそうな色。
「あれ?魔王なんだよね、お父様って。」
『ええ。もちろんですよ。』
「魔王っていったらお城じゃないの?」
『旦那様とその部下の方々だけが行かれるのですよ、魔王城というのは。
普段は幹部の方々が交代で昼夜問わず見張っています。魔王様である旦那様は勇者が来るときだけ出勤されるんです。』
「ええ・・・・。」
魔王というのは魔王城でふんぞり返ってるもんだと思ってたのに・・。
ってか、ここで出勤って言葉聞くと思わなかった・・。
ちゃんと会社じゃん・・ちゃんと職場だし・・
幹部の人なんてちゃんと社畜じゃん・・。
もうやだあ・・転生前と似てるとこあるのやだあ・・・。
働いたこととかないけど、なんか嫌だあ・・・。
異世界に転生したら絶対勝ち組になってやるって決めてたのにどうしてこうなった!? こまねこ @22komaneko22
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