千三つ

コウセイ

第1話   誕生日と呪い

 ゆめうなされ──

「う・・・ううっ」



  ガバアッ



「・・・うわっ!」 

──りんきた。

 そのゆめとは、ぼやけてはっきりとおぼえてないが、りんにはいやゆめだった。

「ふう──っ・・・」

 いきりんだが──

随分魘ずいぶんうなされておったが・・・大丈夫だいじょうぶか?」

「んまあ・・・へんゆめを・・・」



    ギョッ



「・・・てっ!なん勝手かって部屋へやはいっててんだよ!」

 おどろくも、祖母そほ咲枝さきえつづけてう。

今日きょう誕生日たんじょうびであろう」

 このあさ真壁まかべ りんは、十六歳じゅうろくさい誕生日たんじょうびむかえたのである。

「そうだけど・・・なにかくれんの?」

 まった期待きたいなどしていないりんだが──

「もろうてる」

「ほんとか!?」



  キョロキョロ



 ──祖母そぼ一言ひとこと部屋へや見回みまわす。

 だが、どこをどうても、プレゼントらしきものはない。

ものとかでない・・・大切たいせつことじゃから、よくくんじゃ」

ちがうのかよ」

 りんはがっかりするが、祖母そぼはなしをつづける。



  コレコレ コウコウ


  カクカク シカジカ



 ゆめこと目覚めざめがわるく、りんながす。

 そして長々ながながかたはなしきてきたのか──



  ノソリ



 ──りんはベッドからると身支度みじたくをする。



  ゴサ ガサ



「・・・とわけじゃ、わかったか?」

「わかったよ」

 祖母そぼはなしわせ、リュックと制服せいふくつと、りん部屋へや

 すでにほか家族かぞくもの食事しょくじをすませて、りんぶんだけが食卓しょくたくのこされてあった。

 朝食ちょうしょくべていると──



  モグ モグ・・・



「ゆっくりしていいの?」

 ──ははこえに、りん時計どけいをやる。

「いけね!時間じかんだ!」

 あわてて食事しょくじをすませ──

 


  バタバタッ



 ──リュックをかたけ、りん玄関げんかんいそぐ。



  ドタタッ



りんなにかあったらかなら電話でんわするのよ!わかった!?」

 背後はいごからこえてくるははこえに──



  ガチャ



「わかった!(なにかあるのか・・・?)」



    バタン



 ──と返事へんじをするも、りんにかけることなく学校がっこうかう。



  ・・・カン コン キン コーン



 そして放課後ほうかご

 学校がっこうからの帰路きろいえ玄関げんかんのドアにけ──



  ガチャ



 ──りんけた。



  バババンッ!



「びっくりするだろおっ!!」

 玄関口げんかんぐちで、はは祖母そぼかまえていたのである。

 かえってるなり、観察かんさつでもするかのような二人ふたりに──



  ジィーー・・・



気味悪きみわるいなっ!」



  ズサ



 ──りん後退あとずさる。

 するとどこか納得なっとくしたのか、はは祖母そぼ台所だいどころへともどってく。



  パタスタ、 バタスタ


 

なにがしたいんだよ」

 二人ふたりなぞ行動こうどうくびかしげつつ、りん階段かいだんがり自室じしつへ。

 それから数時間後すうじかんごはは祖母そぼなぞ行動こうどうのことはすっかりわすれ、りんはリビングでくつろいでいた。風呂上ふろあがりの、Tシャツにトランクスのままソファーにすわり、テレビをたのしむ。  



   ワラ ワラ



 テレビをていると十一時じゅういちじぎていて、りんははたとづく。



   !・・・



誕生日たんじょうびなのにいわってもらってない!」

 去年きょねん誕生日たんじょうびは、豪華ごうか食事しょくじにケーキがならべられていたが、ばん夕食ゆうしょくはいつものどおりのものだった。ケーキもプレゼントすらなく、おめでとうの一言ひとこともない。そしていつもの時間じかんに、みな各々おのおの部屋へやにて就寝しゅうしん。 はなし玄関口げんかんぐちでのなぞ行動こうどうなに関係かんけいがあるのかとおもうが、リビングにるのは、りんだけ。

るか・・・」

 リビングのテレビとかりをし、りん自室じしつへとげてく。



  チュン チュンチュン



 そうしてあさ、またゆめうなされ──

「うっ、ううう・・・」



  パチ



 ──りんます。

「またおなゆめ・・・」

 今度こんどは、リアルかんして、おんな制服せいふくていたのだ。そのゆめ寝汗ねあせき、シャワーをびようと、りん洗面所せんめんじょかう。

 廊下ろうかちがいに──



  ペタ ペタ



とうさん・・・おはよ」

「ああ、おはようさん」



  スタ スタ



 ──挨拶あいさつわし、ちち眼鏡めがねなおす。

 洗面所せんめんじょはいり──



  ジャーー



「だる・・・」



  バシャ バシャ



「ふーーっ・・・」

 ──あらい、りんいきく。

 


  ドタドタドタッ



だれえええええっ!?」

 きゅうあわてて洗面所せんめんじょみ、ちちさけぶ。

 さけちちにつられ、正面しょうめんかがみると── 



    !


    

だれえええええっ!?」

 ──りんさけぶ。

自分じぶんじゃないかおおんなかおかがみうつる。



  ストン



 なぜかトランクスがち、T《ティ》シャツ一枚いちまいおんなに──



    !

 


「えええええっ!」

 ──またさけちち

 ゆかちたトランクスとさけちちて──



    !



「えええええっ!」

 ──またさけおんな

 さけおんなて、── 



    !  



「えええええっ!」

 ──またまたさけちち。    

 さけちちて──



    !



「えええええっ!」

 ──またまたさけおんな

 そんな連鎖れんささけごえに──


  

  ・・・パタパタ



「どうしたの?あさからおおきな声出こえだして・・・」

 ──ははがやってた。

 いたくちふさがらないおっとに、T《ティ》シャツ一枚いちまいおんな状況じょうきょう理解りかいできないがおもたるふしがあり、ははたずねる。

「もしかして・・・りん?」

 おんなあゆり──



  チラ



 ──T《ティ》シャツのなかむねのぞた。

 つぎにT《ティ》シャツのすそまくり──



  ペロン


「あらおんなだわ、こまったわね・・・学校がっこうどうしようかしら」

 ──確認かくにんするはは。 

 りんおんなわったことより、はは学校がっこうける。

心配しんぱいいらないよ、家族以外かぞくいがいものおんなとしての、りん記憶きおくわっているだろうから、学校がっこうっても問題もんだいないはずじゃよ」

 そう助言じょげんしたのは、いつのにやら洗面所せんめんじょていた祖母そぼだった。

「それはよかったわ、でもふくはどうしようかしら・・・そうだわ!おねえちゃんの制服せいふくがあったね。一緒いっしょ学校がっこうたすかったわ」

 はは放心状態ほうしんじょうたいの──



   ホゲー・・・



 ──りんき──


  

  スタペタ、 スタペタ・・・ピタ



真一しんいちさん、はやかないと会社かいしゃおくれるわよ」

 ──洗面所せんめんじょ入口いりぐちあしめ、おっとげる。

 われてわれかえ真一しんいちだが──

「・・・あ、あああ」


  

   ドタバタ



 ──なになんだかわからずにスーツに着替きがえ、かばんつといそいで出勤しゅっきんするのだった。

 一方いっぽうあね部屋へやでは──



  パパッパッ



 ──りん女物おんなもの下着したぎけさせ──



  ババッババッ


  

りんちゃん!可愛かわいい!」

 ──つぎ制服せいふくせ、ははうれしがる。

のろいは本当ほんとうであったか・・・」

 わってしまったまごりんに、祖母そぼ咲枝さきえおおきくいきくのだった。

 りんにはあねがいて、あねおとうと二人ふたり姉弟きょうだいあね璃子りこ大学進学だいがくしんがくまっていたが、なにおもったのか休学届きゅうがくとどけをす。

 そして数日後すうじつご──



  たび



 ─家族かぞくげ、いまだにかえってないあね

 翌朝よくあさには、普通ふつう女子じょし制服せいふくて、あさ食卓しょくたくかこむ、りんた。

「・・・おとこまれると十六じゅうろくとしによって、おんな姿すがたえられてしまうということなんじゃ」

 真壁家まかべけつたわるのろいについて、祖母そぼかたるもたんにとばっちりだとる。



    ガチャン


  

「じゃおれは!大嘘吐おおうそつきの先祖せんぞのせいで!おんなにされたっていうのかよっ!?」

 はし茶碗ちゃわんつよき、りんわめく。

りんをつけなさい。おれじゃなくわたしでしょ」

 ははいたって、冷静れいせい注意ちゅういうながす。

「どうしたらおとこもどれんの?」

あきらめるんだね、おとこもどったはなしなんていたことないよ」

 祖母そぼ返答へんとうはあっさりしたものだった。



  ガックシ



うそだあああああ・・・」

 かたとしてなげりんをよそに──

「いいじゃないおんなのままで、お洒落しゃれしたりおまりしたりとほかにもたくさんたのしいことあるわよ。ねえ真一しんいちさん」



    ・・・モグ ゴクン


  

おんなたのしさは、ちょっとわからないけど・・・」

 ──ははなぐさうが、おんなになったりんに、ちちである真一しんいち戸惑とまどうばかり。

「そうだわ!今度こんど日曜にちよう一緒いっしょ可愛かわい下着買したぎかいにきましょ!」

 うれしそうに、ははさそう。



  ムス



「やだよ!」

 せきち、リュックをつと─

 


  バタンッ



 ──りんいえしてった。

「あらら・・・むずかしい年頃としごろかしら」

 と、ははらす。

 学校がっこうでは、授業じゅぎょうなどは問題もんだいはなく、ただ更衣室こういしつ女子じょしトイレと、りん場慣ばなれない。

 三時限目さんじげんめ授業じゅぎょうわり、りん人気ひとけのない女子じょしトイレにかった。



  バシャ バシャ



 あらい、ハンカチをすと──



 フキ フキ



「はあ── ──・・・」

 ──ふとかがみうつ自分じぶんて、りんいきく。

 午前午後こぜんごごなんとかり──



  キン コン カーン・・・ 



わった・・・」

 ──放課後ほうかごむかえるころには、りん精神的せいしんてきつかてていた。

 つくえしていたがおもこしげ、リュックを背負せおうと、りん教室きょうしつる。



  スタ スタ



 ちょうど校門付近こうもんふきんで、ちょっとした人集ひとだかりがきていた。



  ザワ・・・



 どうやらモデルみの容姿ようしわせた人物じんぶつが、だれかをさがしている様子ようす校門こうもんりんは、その人物じんぶつ見覚みおぼえがあった。

 ふとりんい──



  ・・・!



「もしかしてりん!?」



  ツカツカツカ



 ──足早あしばやちかづくときつく。



  ギュウ



わないうちに可愛かわいいくなっちゃって!見違みちがえたわよ!」

ねえちゃん・・・」

 二年振にねんぶりの、あねいもうとおとうと)の再会さいかいだった。

「あれ・・・その制服せいふくって、わたしてたやつ?」

「うん」

 りんている制服せいふくに、あねづく。あね高校生こうこうせいで、二年にねん三年さんねん進級しんきゅうするたびに制服せいふく新調しんちょうしていたのである。

「とりあえずいてはなせるとここっか」

 りんつかんで──



  グイ



「どこ?いえ?」

いえか・・・でもりたいでしょ?りんおんなになった理由りゆうというか、本当ほんとう真実しんじつをね」 

 ──あねあるす。



  ツカトコ ツカトコ・・・



ねえちゃんはってるの?」

「まあね、これでも伊達だて放浪ほうろうしてたわけじゃないんだ」

 しばらくあるき、大通おおどおりのはずれにある五階建ごかいだてのビルにく。

「ここは?」

わたしはたらいてる会社かいしゃよ」

 とこたええ──


  ウィ──ン



ねえちゃんはたらいてんだ」

色々いろいろあってね」

 エレベーターがあったが故障中こしょうちゅうかみってあり、すぐそば階段かいだん二人ふたりがる。



  カツン、タン カツン、タン・・・



 ──三階さんかいくと通路つうろすすむ。

 そのさき、とある一室いっしつの──



  カチャ



 ──ドアをけた。


















 












































 




















 



  





 





 

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千三つ コウセイ @potesizu

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