リスタート・『小學』についての序

【中村惕斎先生の小傳】

【中村惕斎先生の小傳】

(先哲遺著漢籍國字解全書による)


 中村惕齋、名は之欽、字は敬甫、惕齋はその號である。通稱を七左衞門と云い、後仲二郞と改める。京都の人にして、家、世々よよ商賈を事とし、家財、すこぶる富む。惕齋、人となり謹厚にして物と競わず。故を以て家產ようやく(徐々に)落ち益ます窮乏したけれども晏如としていた。學を好み博識の君子をもって推され、伊藤仁齋とその盛名をひとしうした。時の人、語りていわく、仁齋、兄たり難く、惕齋、弟たり難し、と。惕齋は學者の好んで異說をて先儒を非毀ひき(非難か)するをみたるをもって、その經を講じ義を說くや、一に朱說に從い、あえて奇をてらひろきを誇らなかった。常にいわく、「經義を說くは、むしろ低きも高くするなかれ、つたなきもたくみなるなかれ、研究訓析、つとめて要旨を得るをもって要歸となす」、と。漢文の著書、はなはだ多きが上に、假名かな文の著書もすくなしとできない。假名文の著書中、『示蒙句解』は經典をおさむる者の好指南車として特に尊重せられ、『姬鏡』は女子必讀の書として大いに行われたるものである。元祿十五年七月廿六にじゅうろく歿ぼつす、年七十四。


 ※ 「てにをは」(助字)をいじり、言葉を補っています。名文の文体は崩れています、申し訳ない。以下も同じです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る