『小學句読』序(7)

『小學句読』序

 事にこに從がわんこと、だそのことばを讀むのみならんや。「明倫」を讀んでは、父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序、朋友の交を知って、必ずその事を踐み、「敬身」を讀めば、心術の要、威儀の則、衣服の制、飮食の節を知って、必ずこれを己におごそかにす。



 ー 『示蒙句解』による注 ー

 ・これより以下は、『小學』の書のまなびようを説いている。「ここ」とは、『小學』をさしている。


 ・「に」とは、「なんぞ」ということばである、「なんぞ(どうして)」ただこの書の言葉を、読み覚えるだけでいられようか、これ(『小學』)に学ぶところを実践しようとする。


 ・「親」は、「親しむ」である。父子は骨肉が(もとは)一つであるので、極めて互いに親しむべき道がある、このために親愛をむねとする。


 ・君臣は、骨肉の親しみなく、ただ義をもって上・下の分を立てる。このためにその道は禮義を旨とする、


 ・「別」は、「かち」である、男・女は狎れやすきものであって、狎れ汚がせば禽獸に近い、このために分別を道とする。


 ・「長」は、おとな(大人)しく、「幼」は、いとけなき(もの)である、だいたいの長幼を言って、兄・弟もその内にある。長幼の間では、その次第(順序か)がみだれないのをもって道とする、


 ・「朋友」は、ともである、「朋」は朋輩(職場の同僚)、「友」は同志(志を同じくするもの)である。「交る」とは「信」をもって交じわるのだ。朋友は互いに信實を守るをもって道とする。これは親・義・別・序・信の五つの義を、知るべきである、ということである。これは「明倫」の内の五つの條目である。


 ・この書の内、敬身のことをしるすところを、読みてはということである。


 ・「心術」とは術の道である。心の物にふれ、事にしたがってゆくところを心術と云う。「要」とは心術を正しくする簡要である。


 ・「威儀」は禮義のかたちである。人の見て、おそれうやまうべきところを威と云い、人の見て、法とするべき所を儀と云う。「則」は、法である。是れは威儀をかいつくろふの法則を云っている。


 ・「衣服」は、身に着る物を云う、「制」は、法である、衣服を作る法制を云っている。


 ・「飮」はのみもの、「食」はくいものである。「節」とは、物のよきほどである。是れは飮・食を用いる禮節を云っている。心術・威儀・衣服・飮食、四つの物をつつしむ義(意味)を知るべきであるということである。是れは「敬身」の內の四つの條目である。


 小學の條目はすべてで(明倫・敬身を合わせて)九つである。


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