真犯人
そして、その扉の外で小声で会話をする、女が二人。
「尼僧長も女だったんだねぇ……わぁ、ロマンス……」
「声が大きいですよ、タチアナ。あなたの功労を考えれば立ち聞きする権利くらいはあると思ってこの場に居させていますが、お静かに」
「おっと、すみません副院長。ところで、オリガ副院長、アデレードって名前だったんですね」
「ミドル・ネームがね。今となっては、その名を知っているのはシェリルくらいなものだけど」
「で、結局、わたしが苦労して夜中に礼拝堂の端末から公開したあの古い写真は、誰のものなんですか?」
「誰にも言っては駄目よ。……あれはわたしです。撮ったのはかつての尼僧長」
「うわぁ……あんなナイスバディ美女も五十年でこうなるのか……くわばらくわばら」
「聞こえていますよタチアナ」
「へいへーい。で、なんだってこんな真似を?」
「審問官、本来は終身の職務なのだけれど、重い病気にかかってもうじき引退するんですって。長くはないわ。本人から、最後に一度だけシェリルにもう一度会えないものかって、相談されてね。そういうこと」
「こんな回りくどいことをせんでも、尼僧長に事情を打ち明ければよかったのでは?」
「女も七十年やっているとね……色々あるのよ」
「ふーん」
「ところでタチアナ。あなた、神様ってものは本当にいると思って?」
「やだなぁ。これだから二十世紀生まれは。今どきの若者に馬鹿なことを聞かないでください。そんなもの……」
タチアナは満面の笑みを浮かべて、言う。
「いるに決まってるじゃないですか」
孤島の修道院にて きょうじゅ @Fake_Proffesor
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