異端審問官

 結論から言えば、事件はまもなくマスコミにすっぱ抜かれ、そして当然の帰結として教皇庁にも知られるところとなった。そして、本土にある司教座から、管区の異端審問官が送られてくることになった。


 名前だけは昔と同じなので仰々しいが、いまの異端審問官は別に魔女を火炙りにするための役職ではない。要するに、尼僧長よりも偉く、お説教のできる立場の人間が他にいないので、お説教のために送ってこられるのである。


 修道女のヌード画像を修道会のホームページに掲載した真犯人は、アデレードでも、シェリルでも、リンでもなかった。というか、リンはもうここにはいない。彼女がこの島を去ったのはのことである。


 ではシェリルはというと。


「お久しぶりですね、シスター・シェリル」

「ええ……久しぶり、審問官さま」


 今は、この修道院の尼僧長をやっている。


「今度の犯人は誰なのですか? まさか、またあなたが?」

「いいえ。犯人は分かりませんでした。三人、容疑者がいましたが、関係のない理由で夜中に端末に触っただけです」

「……ふむ? で、あの写真の主は……」

「もちろん、わたくしですよ」

「あのときもそう言って、確かめさせたのに。あなたの脇腹に、ほくろなんかなかったじゃありませんか。結局、あのの主は、誰だったんです。アデレード? それともリン?」

「うふふ。修道女の秘密というのは、知らぬが花というものですのよ……」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る