何で俺のゲームキャラはこんなにおかしいんだ……?
名前
第1話:この主人公だめだ……
――僕の名前は、ゆうた。この前中学入学したばかりの一年生だ。
今日は初めて友達から進められたゲーム、『life of life』をプレイする。
ウェブサイトを見るに、“国内最大級“とか書いてあったから、きっと面白いのだろう。
パソコンで『life of life 』と検索し、ダウンロードのボタンを押す。
しばらくして、そのアイコンがデスクトップ上に浮かび上がってきた。
それをダブルクリックして開き、アカウントの設定などを済ませると……
「うわぁ……綺麗……!!」
透き通るような、グラフィックと爽快感のある音楽。これが”国内最大”かと、胸をブレイクダンスさせる。
「あぁ……!!」
場面が変わって、主人公の村が臨場感のある音楽と共に敵に焼き討ちされる。
そして、幼馴染が敵の大将によって攫われ、主人公が必死に抗うも、叶わず、幼馴染ははるか遠くの魔王城に連れて行かれてしまった。
自分の無力さに憤慨する主人公。そして、俺が絶対に助け出すと硬い決意をするのだった。
「待っててね、ドロシー……」
僕も主人公と同じように幼馴染を助けようと決意する。
◇
――日が明けて、主人公は幼馴染を助けるため冒険の旅に出ることとなった。
「がんばってこい……!!」
「あいつを頼むぞ……!!」
ドロシーの親や、主人公の義理の親などが迎える。
剣や薬草、道中で食べる食料を受け取り、ドロシーが昔くれたペンダントを首から下げ、ついに門を超え、旅に出る。
「――あ、敵だ……」
歩いていると、敵に遭遇した。
「なるほどね……」
そして、操作説明がされた。このゲームは基本的に自由なアクション戦闘である。
「えーっと、装備、装備……」
メニュー画面を開き、先ほどもらった剣を装備する。
「喰らえ……」
まずは、通常攻撃で引きつけて――ッ
「……?」
攻撃のキーを押しても、全く反応がなかった。
それどころか、段々と敵と逆方向の方に行ってしまった。
『俺戦いたくない……』
――瞬間、画面に一つのスクロールが出た。
「え?」
『怖いからやだ。家帰る』
そう言うと、何も操作してないのに、敵に背を向けたまま、村の方へと走っていってしまった。
「おお、おかえり。どうした?」
家に入ると、驚いた顔の義理の母がいた。
『冒険怖い。俺、”引きこもる”」
「え? あっ、ちょ――ッ」
自室のドアを開け、ベッドに寝転び、布団を被ってしまった。
「どうなってるんだ? これ?」
移動のキーを押しても全く反応しない。
『ニート最高……!! 引きこもり最高……!!』
ベッドに寝転びながら本を読んで、ゲラゲラ笑いながら、そう叫んだ。
「――一回電源落としてみよう……」
多分バグだと思い、パソコンを再起動させる。
「治ってない。というか……何かただ引きこもりの日常を観察するだけのゲームになっている……」
扉の前にご飯を置く母親と、時折本を見て笑う主人公。そんなシュールな光景が永遠と繰り返されていた。
「もうやめよう……」
僕は悟った。このゲームは駄目だと。第一主人公のやる気がない。
デスクトップ上にあるアイコンを右クリックして『削除』のボタンを押す。
「何だあのゲーム……」
◇
「――あぁぁぁ……!!! また暴走しやがった……!!」
ユーザーから来たメールを見て俺はそう確信する。
「そもそも、すべてのキャラクターにAIを搭載したのが間違いだったんだ……!!」
allAIによる、リアリティの追求。これがこのゲームのコンセプトだ。
しかし、そのせいで、主人公がああだったりして物語が進まないとかいう、詰みが発生する。
「っち、悩んでったって仕方ない」
俺は、メールを送ってくれたユーザーさんにお詫びの文と、修正するというむねを送る。
「おっ、来た……」
『わかりました。わざわざありがとうございます……。治り次第、もう一度プレイしてみます……』
「良かった……」
どうやらこのゲームを再プレイしてくれるらしい。搭載されたAIが日々進化しているせいで、ああいうことになって、このゲームを離れる人が増えている。”国内最大”を気取ってはいるが、今やそれも怪しい。
「やるか……」
今回のバグは【主人公のやる気がない】ということだった。俺は、プログラムの画面を開き、主人公の行動が書かれている部分を軽く修正する。
「”主人公は情に熱く、仲間のためなら平気で命を投げ打てるような人物”っと……」
『おい管理者』
――俺がエンターキーを押そうとした瞬間、画面からこのゲームの主人公の声が聞こえた。
『やめてくれ、俺は旅に出たくない。怖い。死にたくない』
「え?」
『え? ではない。俺を旅に出すのは辞めてくれ』
「聞こえているのか?」
『ああ』
どういうことか、ゲームの中の主人公と通話状態になっていた。
「まぁ、よくわかんねぇけど……良いか……」
この状況をよく理解できないが、ひとまず俺は、
「すまんね、こちとらこれを修正しないと、こわーい姉ちゃんに怒られるから……」
『え? おま、何を言って……」
エンターキーを押した。
◇
――数日後、yuta と名乗るユーザーから再びメールが来た。
『こんにちは。先日はありがとうございました……。バグが治ってからというもの、毎日楽しくプレイさせていただいています。ですが……』
「ですが……?」
メールの内容は嬉しいものだった。管理者としてこれ以上の幸せはない。だが、最後に……
――瞬間、スマホの着信音が部屋に響き渡る。
見ると、このゲームを共同制作している会社の”ナナセ”さんからだった。
「――はい」
「――貴様、何を考えている……!! いつからこのゲームは十八禁ゲームになった……!!」
その声はどう考えても怒っていた。
「それはどういう……?」
十八禁ゲームになったーと叫ばれても意味がわからない。このゲームは十二歳以上対象でとても健全なはず。
「なんで、一人目の仲間と出会った途端、道端で凄いことをし始めるんだ……!!」
「えぇぇぇ……!?」
意味がわからな過ぎて心底驚いたが、急いで、パソコンを起動し、言われた場面を映し出した。
「……」
言葉を失った。大勢が見守る中、いかがわしいことをしている主人公と、一人目の仲間の女騎士。何故か自動で掛かっているモザイクがより一層、いかがわしくしている。
「直せ!!」
そう言うと、電話をガチャッと勢いよく切った。
「はいぃ……!!」
急いでプログラムを開き、この部分のプログラムを見つけ書き換えようとする。
『おい』
すると、先日と同じように主人公がいかがわしいことを続けながら俺に話しかけてきた。
「何でまた喋れるんだよ……」
俺はこの不思議な状態を疑問に思った。何で一度だけでなく二度も、ゲームのキャラクターが、管理者と会話できるんだ?
『やったら、殺すぞ?』
今回はシンプルに脅迫してきた。
「辞められるわけ無いだろう……」
こんなものユーザーさん達にはお見せできない。(まぁ、一定数喜ぶ人もいるだろうけど……)
『おい、本気か? 三下風情が……!!」
「っち――」
ただのゲームのキャラクターなはずなのに、何故かイラッとくる。
『おい、待て、ちょっと――!!』
「ポチ」
そんな言葉を裏腹に俺は容赦なくエンターキーを押した。
『覚えていろ、三下ぁ……!!』
「ナナセさん。終わりました」
俺は報告のため電話を掛けると、憔悴しきった声のナナセさんが出た。
「あぁ、どうやら治ったみたいですね……」
確認して安堵したのか、いつもの口調に戻っている。
「困ったものですよ、バグが多くて……」
「ええ。でも、all AIによるリアリティの追求がこのゲームのコンセプト。仕方ないのかもしれませんね……」
「確かに……」
だからといって、リアルを追求した結果が、この有様となると、管理者として少し悲しい。いるさ、確かに、たまにニュースとかでこういうおかしい奴がいるって聞いたりする。でも、それでも、確信できる。
――この主人公はだめだ……
何で俺のゲームキャラはこんなにおかしいんだ……? 名前 @mayu12191219
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