第4話これが仕事
全て話した、レネットと名乗る女の事、俺とカムイの足りない記憶について何か知っているという事。そして、その上でカムイに聞いてみた、「お前はどうしたい?レネットについて調べれば何かわかるかもしれない。もしかしたら俺たちには両親がいて、もっと大切な何かを思い出せるかもしれない。」俺はそう言ってカムイに意見を求めると、少し不安そうな顔おをして口を開いた。「兄貴、私は今の暮らしに満足したるんだ。二人だけの生活も、二人だけの時間も。それにもし、レネットが何か知っていて記憶が戻ったとしても・・・怖いんだ、思い出したくない事も思い出しそうで、今の関係が・・・壊れてしまいそうで。」同じ気持ちだった。でも話をしていると、両親のことには興味はあるらしい。それもそうだ。二人で暮らして金も自分達で稼いでいるとは言え、俺とカムイはまだ6歳、自立するような歳ではない。「明日、レネットに話を聞いてみようと思う。」俺がそう言うと、カムイが不安そうな顔をした。「大丈夫だって。何か思い出したぐらいで、俺とお前は兄妹だ。この関係は壊れたりしないよ。ずっと一緒に居るから」少し嬉しかったのか、カムイの顔に笑顔が戻った。よかった。「さて、そろそろ出るよ。これ以上風呂に入ってたらのぼせちゃうから。」そう言って風呂から出ようとすると、「私も。」カムイも一緒に湯船から上がりった、「兄貴、私の体拭いて。」「嫌だよ、自分で拭きなさーい。」「はーい。」カムイは満面の笑みでそう言った。平和な時間だ、このまま何事もなければ良いな。またフラグのような事を言ってしまった。
風呂も入り、夕食も済ませたカムイはすっかり眠りについた。この寝顔をいつまでも見ていたいが、俺は今から仕事だ。クズな大人達のおかげで稼げている仕事。レネットにはやめてほしいと言われたが、そんなのは関係ない。短時間で楽に稼げて、自分の能力、そしてこの中性的な顔立ちをフルに活かせる仕事だ。まずは変装、と言うより女装と言った方がいい。指定された高級宿の下見をして、相手のことについて出来る限り下調べをする。どの程度の貴族で、どれぐらいの資産があるかを調べて、値段交渉をする。その為、収入は相手によって全然違う。一回の仕事で、俺とカムイの一年分くらいの生活費を積んでくるクズもいる。もう気付いたかもしれないが、俺の仕事は援助交際みたいなものだ。いや、援助交際よりもはるかにタチの悪いものかもしれない。普通援助交際は、金をもらう代わりに女性が男性と遊ぶものだが、まず俺は女性じゃない。性別など関係ない時代にはなって来ているから、同性愛もいいとは思うが、俺は女装している。おまけに、遊んでもあげない。そもそも相手のクズは、6歳相手に変な事をしようとしている自覚があるのに、どいつもこいつも部屋に入った瞬間獣の如く、襲いかかって来やがる。俺は世間で言うところの早熟というやつで、6歳の割にいろんな事を知っているつもりだ。この国のルールには詳しくない、それに興味もないが、6歳に手を出していいはずがない。おまけに、俺の客のほとんどが国のお偉いさんの貴族どもだ。この国のルールには、性処理の対象に年齢など無いのかもしれない、そんなふうに思えて来た。なんにせよ、相手がクズならこっちもクズでいないとフェアじゃ無い。俺の体には指一本触れさせたことはないし触れさせる気もない。いつ覚えたかわからない相手に幻覚を見せる能力で、遊んであげている幻覚を見せて、最後は正気に戻らせてあげて、平和的にお金をもらう。そのおかげで変なトラブルにもなっていないし、女装しているから身元がバレる心配もない。ちなみに妹にも俺の商売のことは話してなくて、酒場で働いていると嘘をついている。だからこそ誰にもバレるはずがないのだが、レネットはこの商売のことも知っていた。自分で言うのもあれだが、ヘマをしたことは一度もないし入念な下調べをして、どこで着替えるかなど、綿密な計画を練ってからするようにしている。謎は深まるばかりだが、カムイが起きないように準備を済ませて、俺は今夜も一生懸命働きに出かけた。
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