4-102.自分勝手な所信表明

※今回は、ヘルメス視点から展開されていきます。

※これは十月十一日の更新分となります。

待っていてくれた方、本当に申し訳ございませんでした!!!!!!!!

※十一月九日、加筆修正致しました。

ご確認のほど、よろしくお願いします。



 ――僕はもっと沢山のことが知りたいと、常日頃から思っている。

世界は我が身一つじゃ飲み込めない程に広大だ。だからこそ、愉快な玩具として捉えている僕がいる。

世界は何も土地だけじゃない。そこに暮らす生物、いや万物は勿論、そこに根付く文化だってそうだ。

どれだけ多種多様に発展してきたか。考えるだけでワクワクする。


 僕は『幸万者』と呼んでもらっているけれど、それが全ての顔ではない。

僕の趣味は、本当に多岐に渡っている。ただ運が良いというだけが、僕の取り柄となることはないのだ。

でも、誰かを定義する際には、その一番の特徴をその名に反映したいと思うのだろう。その考えは僕にも大いにわかる。

もう何千年、何万年と生きていく中で、変わらない考えがあることを知った。

その人類では考えられない積み重ねを経て、しょうがないからその定義を受け入れることにした。

 多岐の中の一要素。幸福が僕の代名詞。それはわかった。

じゃあ、それ以外は何か。そう、その最たるものは万物への興味だ。

世界には数多の概念に基づいて、無限にも届く万物が存在している。


 その中でも、一番僕を夢中にさせるものがあった。

上界で生きる万物、皆知っていて、この世界を語る上では欠かせない神物――至上神ゼウス、いやゼーちゃん。

この世で、色々な場所に行って、色々な風景を見て、色々な万物と関わりをもったけど、やっぱり一番は変わらない。

 周りにとやかく言われてしまうこともあるし、完全無欠な存在でもない。

少し力をもっていたというだけで、たまたま皆に任せられた役回り。熟す姿はお世辞にも良いとは言えない。

それでも、僕が惹かれてやまないのは、裏と表での乖離ギャップが凄まじいところにある。

表は鋭く言い寄られタジタジになっている様子が容易に想像できるが、殊裏では、『オリュンポス十二神』以外の女性に対して、とても男前な姿を見せてくる。

その豹変ぶりを毎度楽しませてもらっている自分がいた。

あの男前にはどんな男とて、勝つことは難しいだろう。何より女性を第一に考え、細かいところにまで気を配る。

小粋な会話で笑顔を引き出し、その笑顔に食い付く。気付けば、ゼーちゃんとの距離感はグッと近くなり、一夜を共にする。

その鮮やかな一連の流れが、堪らなく刺激的だった。

僕がこうして観察をしていることを知ったヘラへーさんは、僕を殺そうとしてきたけれど、それさえも最早一つの玩具だった。


 まぁ、とにかくだ。ゼーちゃんの近くにいれば、何か楽しいことが起こる。

『オリュンポス十二神』の面々は、僕のことを尻拭い要員として使われている可哀想な奴だと指を差してくる。

だが、僕から言わせてもらえば、こんな役回りをさせてもらっていること自体、願ったり叶ったりなことと言えるのだ。


 また、新たな戦いが始まるらしい。地獄界になんて、何か用事を任されない限り行くこともない。

前のペルセポネセポ姉の時は、ゼーちゃん一柱で解決してしまったもんな。

だから、漸くだ。漸く機会が巡ってきた。

 こうして、戦いに参加できるのもゼーちゃんのおかげ。さっきまでは『神議コロキウム』してたし、ずっと息苦しかった。

やっぱりゼーちゃんが見せてくれる世界で生きていた方が、気持ちが明るくなる。

この地獄界へと向かう面子にゼーちゃんが含まれていないことは悲しく思えど、周りにはまだ絡んだことのない『神様』もいるじゃないか。

コイツと絡んでいれば、また楽しい時間を過ごせそうだ。早く帰って、どんな奴だったか、報告しなくっちゃな!

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