4-94.『裏切り者』と『神議』(その十九)
※今回も前回と同様、ゼウス視点から展開されていきます。
※楽しみにしていた方、申し訳ございません!
更新が遅れに遅れてしまいました。謝罪申し上げます。
本当にすみませんでした!
風前の灯に、火が灯っていないとは言っていない。幾ら殴られようが、蹴られようが、そこに盛り輝く火は存在していた。
アスクレピオスは触れてはいけない罠に触れ、見事に一杯食わされたかたちになっていた。
そして、俺を始めとした『オリュンポス十二神』とその他は、無意識に自らの『勝ち』を確信していた。
あんなに威張り散らかしていたのに、いざこちらの種明かしが始まれば、何一つ言い返せずにただ沈んでいくばかりだった。
なのに。なのに、何故なのか。まだアスクレピオスは死んでいない。
――それはどうカナ?
『
「上手くいくってどこかで思う自分もいたネ。だってほら、天空二階層をあんなに好き勝手させてくれたんだしサ。
きっと甘いんだろうなってネ」
「てめぇ!」
「止めろ、ヘルメス。お前らしくもない」
「だって、ゼーちゃんをバカにされたような気がしたから」
「…………」
「実際は上手くいかなかったヨ。
「どっちが本当のお前なんだ?」
「あぁ、それは『今』。『オリュンポス十二神』の候補神だったとて、他の『神様』のことを微塵も気に掛けないんだから、知らなくて当然だヨ」
「それは…………本当にすまん」
「悪いのはそっち。でも、それで計画を最速で進めることができたんだから、儲けものネ」
「…………」
「私、ここで終わらせられればいいと思っていたヨ。タナトスの意志とは反していたけどネ」
「終わらせる? 何を? 『
「そう、『オリュンポス十二神』の真っ向からの破壊ネ。
内部から瓦解していけば、こちらに対抗することも叶わなくなると思ったんだヨ。……でも」
「現実の壁は厚かった、と」
コクリと動く頭。普通なら悲しげな表情をしてもおかしくない状況であるにも関わらず、なぜかその時の表情は笑顔のまま崩れていなかった。
知らず芽生える恐怖。冷や汗は冷え切って末端から凍っていくような感覚に襲われる。なんか、嫌だ。気持ち悪い。
「まぁ、もうタナトスからの指令は十分果たせているしネ。
計画、研究の果てももう完成間近のものを拝むことができたヨ。だから」
「待て、何だ。死ぬつもりか? タナトスの指令は何だったんだ? それに計画、研究の果てって」
「うん。冥途の土産に教えてあげようネ。タナトスが私に託した、『オリュンポス十二神』潜入作戦。
その『目的』は、単なる
期間は二週間。少し足りなかったけど、及第点ネ。世界最高峰の実力者集団を十三日間も足止めできていたんだしサ」
『オリュンポス十二神』の下界降臨から一週間の部屋待機。その発端は、『裏切り者』の示唆によるものだった。
思えば、最初にこの円卓の間に入ってきた時にあまり嗅いだことのない腐臭のようなものが漂っていた。
これはネムちゃんの言っていた『死の残り香』だったんじゃないだろうか。
『
隙を見せてきたところに乗っかるかたちで、できるだけ長引かせる方向に展開していく。
そうして、思った通りに進まされた結果、『今』があるということなのかもしれない。
してやられた。そんな思い、『今』となってはもう遅過ぎる後悔だった。
「計画、研究の果ては、長らく続けてきた完全体竜の完成が主だヨ。
『一千年』を短くする。それも私達にとっての一瞬にまで、ネ。
かなり難航した。鬼のような試行錯誤を、この正規の研究所内の補血を用いて、行っていったネ」
「俺達の研究を誰よりも深めていってたのは、アスクレピオスだった。その名こそ知れど、何をしているかまでは知る由もなかった。
これのどこが『支配』する者の態度なんだ……」
過去は変えられない。他の万物よりも圧倒的に重い責任をもつ『神様』の歴史において、どれだけの汚点を示してきたか。
その解像度ばかりが引き上がり、絶望はどこまでもどこまでも呼吸を苦しくさせた。
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