4-90.『裏切り者』と『神議』(その十五)
※今回も前回と同様、ゼウス視点から展開されていきます。
滅亡肯定の過去は、この盤面においてはかなりの痛手になる算段だった。
アスクレピオスを黙らせるには、十分な力があると思っていた。
よくもアポロンを嵌めようとしてくれたなと。今度はこっちの番だから覚悟しとけと。
そう言ってのける準備をしていたのにも関わらず、現実はそんなに安くなかった。
アスクレピオスの反応は、予想の範囲内といった様子で、うんうんと頷くばかり。
否定もせず、寧ろ肯定してもいい、それくらいどうってことはないと、暗に伝えてきているような表情だった。
無性に腹立つ心情を抑えながら、顎で何か言うよう促す。
すると、人差し指を前方へと突き出し、円卓に沿ってぐるりと一周させてきた。
突然の理解不能な行動に、一同は顔を斜めに傾けた。
「ゼウスの言い分はわかりました。では、逆に聞きましょう。
今度はワタシ含めた、他の『オリュンポス十二神』の番です」
「というと?」
「決まっているでしょう。一週間何をしていたか、全員分聞きたいってことです」
……やっぱりか。少し泳がせてはみたが、わかり切っていたことだった。
アスクレピオスにも、大分と必死さが滲み出てきているな。何をそんなに焦っているのだろうか。
いきなり方向転換を決め込んできたアスクレピオスに、自然と更なる疑惑をかける自分がいた。
さて、ここは順番に言っていってもらおうか。俺は無言のまま、視線を真正面に座るアレスに向けた。
ここには総勢十柱の『神様』が座っている。
アレス、アポロン、クロノス、ヘルメス、アルテミス、アテナ、デメテル、ディオニュソス、アスクレピオス。
『今』疑いが掛けられているのは、アポロン、クロノス、アスクレピオスの三柱だが、一体どうなるか。
俺が白であることを知らないで、容疑を吹っ掛けようとしてきたアスクレピオスを一番疑いたくなってしまうのは仕方のない心理だろう。
そんな、ここまでの情報を整理していた俺を置いて、アレスは自らの一週間を語り出した。
――最初に言わせてもらうッ。オレァ、『オリュンポス十二神』を裏切る理由をなんももっていないンだッ!
だから、絶対に『裏切り者』なんかじゃないッ! ンで、オレのやっていたこたァ、たったコレだけよォ。
ヘルメスと飲んでいたンだッ! 楽しかったぜェ! なァ、ヘルメスゥ?
――え、えーと、そうなんだ! なんか急に誘ってきて、ビックリしちゃったよ。
でも、楽しかった。まさか、一週間にもなるなんてね。
じゃあ、次は……テミっちゃん! いってみようか!
一柱、二柱と続く証言。どことなく違和感を覚えさせる発言をしているのは何故だろう。
アレスの無理やり感といい、ヘルメスの合わせた感といい……。
どことなく落ち着かない気持ちを抱きながらも、次なる発言者、アルテミスの証言に耳を澄ませた。
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