4-88.『裏切り者』と『神議』(その十三)
※今回も前回と同様、ゼウス視点から展開されていきます。
思った以上に、筋立て通りには進まなかった。だが、結果として煩雑な提示になってしまったことを悔いている暇もなかった。
すぐさま始まるは修行の時間。聞けば、
確かに身体はよく鍛えられていた。傍から見て、その
だが、気分を高めてあげようと褒めちぎったのに、あまり良い反応は貰えなかった。
これには、こちらも拍子抜けさせられる思いだった。基本的に、生物は自らがやり込んできたことに対して、誰かに気付いてもらえると嬉しいものなのだが……。
まぁ、人には触れられたくないものもあるのだろう。複雑な事情でも絡んでいるのかもしれない。
別に、そこには高い比重が掛けられている訳でもないし、一旦置いておくことにする。
実状、『今』向き合わねばならないのは、忘れ去られた『
そのためには、魔法の練度を高めるのと同じ過程が必要になってくる。
つまりは――脳内で
事の渦中で無理やりにでも息をすれば、実感と共に寝ぼけた『
――先にも述べた通り、ザビに発現する『
血はもらえていたのに、何度も代が替わっていく内に、忘れていってしまったらしい。
魔法の習得、もとい『
因みに、一柱目は『治傷者』。瞬時に傷を癒せる魔法を行使できるようになる。
二柱目は『消能者』。魔法の効果を打ち消すことを可能とする。
三柱目は『操物者』。聞いて音のごとく、物を操る力を得る。
どれも『神様』由来の強力な権能だ。ぜひ全てを高次元に使い熟し、『
俺からのこの触れ込みを受け、修行は開始された。
別に何か教えることもない。後はザビ次第で、短くも長くもなるのだ。
習得が進めば、組手をして実力のほどを確かめようと決めていたが、なかなか苦戦しているようだった。
一度も使ったことも見たこともない魔法もあるに違いない。そんなものを
それでも、この絶え間ない一歩を、
途中からは可能な限り、俺も
ザビを見兼ねての事だった。
そうして、やって来た組手の時。お互いの心臓は、五月蠅いくらいに跳ねていたと思う。
その場の熱気は尋常ではなかった。どちらともなく接近し、仕掛けていく魔法。
魔力がぶつかる度に、隠し部屋が大きな揺れに見舞われた。
――何度も何度もぶつかり合った俺達。結果は最初から最後まで、一度たりとも変わることはなかった。
そして、その過程も変化していくことはなかった。
ザビの戦績、二百八十六戦、零勝、二百八十六敗。
勝負は俺の完勝でしかなかった。魔法の行使も片鱗こそ最初から見えていたが、最後まで失敗続きだった。
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