4-84.『裏切り者』と『神議』(その九)

※今回も前回と同様、ゼウス視点から展開されていきます。



 俺が何か、言葉を続けるとでも思っていたのだろう。じっと顔を見つめ合うこと、かれこれ数分が経過した。

こちらは脳がほぼ機能を放棄しているような状態で、与えられた点と点が脳裏を浮遊し続けていた。

そんな俺を見計らってか、一つ瞬きをしたザビが、言葉を選ぶようにしながら数分前の質問に答え始めた。


「まぁ、俺の人格の話は置いとくとして……えぇと、世界の成り立ち、か。

それについてはちょっとばかし知ってるぜ。確か、この世界は元々十個の塊だったんだよな。

それが王都のゲートが十個の理由なんだって聞いた」


 まさかそんなことを知っているとは驚いた。これは他の覚醒に至った『神種ルイナ』から聞いたのかもしれないな。

存外、話し易くて助かる。脳も徐々にではあるが、正常な働きが戻ってきていたところだ。


「そう、世界は元来十個の塊が一つとなったものなんだ。そして、お前達『神種ルイナ』も十柱存在する。

この十の対応は、決して偶然なんかではない。世界と『神種ルイナ』は、『神様』と『神種ルイナ』の関係性のように番を成しているんだ」


「番だって⁉ ならさっき言ってた『神種ルイナ』の死によって世界の十分の一が滅びるってヤツは……」


「あぁ、ご想像の通り、対応した世界が滅びることになっている」


「ほぉう、なるほど……。ん、でも『神種ルイナ』が十柱しかいないなら俺はどうなる?

魔法は使えるし、王族だし、俺も『神種ルイナ』なんだろ? 俺を呼ぶとき、『幻の十一柱目』って言うじゃねぇか」


「良く気付いたな。そう、十柱しかいない筈の『神種ルイナ』に、『幻の十一柱目』がいる。

魔法の行使が可能で、王族であるお前も、『神種ルイナ』であることに相違はない。普通に考えたらおかしな話だ。

でも、これにはちゃんとした訳があるんだよ」


「訳……?」


「こんな話を聞いたことはないか? 自分の死によって他人の呪いを解く能力があるって」


「……え、あ、ある! オズに聞いた、俺の弟に‼」


「お、おう、そうか。それは『庇死者』の能力。

俺達『オリュンポス十二神』が世界を滅亡の窮地から救うために創造した、最後の『神種救世主』だったんだ」


「滅亡を齎す呪いを解くのが俺ってことか⁉」


「そうだ。そんなに驚いてはいるが、歴代の『幻の十一柱目』は、着実に『神種ルイナ』をその呪いから救い出してきている。

現にお前も、一柱は救っているじゃないか」


「え」


「おいおい、そんなに大事にしているのなら、わかってあげておいてくれよ――自分の弟を救っていたことくらい」


「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ‼」


 気持ちの良い絶叫が、一柱と一人の空間に響き渡った。

そうそう、どこか余裕ぶっているような奴なんかじゃなく、ザビはだと聞いていた。

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