4-80.『裏切り者』と『神議』(その五)
※今回も前回と同様、ゼウス視点から展開されていきます。
俺は望まれた通り、ここ一週間で自らがやってきたことを明かしていった。それはそれは、事細かに、大袈裟かつ大胆に。
これで誇張がないのだから、その濃度は尋常なものではない。自分でも上手く事が運びすぎることに、恐怖すら抱く瞬間があった。
俺が関与していたことは、決してほんの『一千年』やそこらの話で片付くことじゃなかった。
ざっと一億年ほどの歳月の結晶が、育まれ誕生した一週間だったのだ。
×××
―― これは、俺の過ごした一週間の全てだ。
俺達『オリュンポス十二神』は、ある『目的』のために下界へと降臨した。
通常時における、無断での降臨は誰であろうと天罰が下されることになっている。
だが、今回に至っては緊急事態。五柱もの『神様』を同時降臨しても良いとの判断がなされることとなった。
本来であれば、ポセイドンに助力を願っていたところだったが、なぜかその時には姿を現すことはなかった。
仕方なく、そのまま顕現することになった俺達。
あとから、まさか『裏切り者』に成り下がっているとは思わなかった。
大きな穴は未だ埋まりそうにない。ただ、いつまでも悲しんでいては、問題解決が先延ばしになるだけだ。
本当に心の底からの『裏切り者』かどうかは、ポセイドンに聞かないことにはわからないしな。
さて、話を戻そう。
俺に託された任務は『
まぁ、ここでもったいぶる必要もない。さっさと言おう。
もう一つ――それは、『
歴史上、一度だって人類に話してやることはなかった。
話す機会を探ろうにも、こちらからの干渉は極力避けるべきであるという風潮が流れていたし、もし機会が設けられたとて、相手が取り合ってくれる筈もなかった。
実質の敗北の意味は、どこまでも俺達を苦しめてくる結果を齎した。
『今』となっては、自業自得だったが、まぁ当時は認めたくもなかった。
……そんな訳で、人類何世代にも渡って、ひた隠しにされてきた事柄だったのだ。
だから、この歩み寄りとも言える一歩は非常に大きな意味を孕むこととなった。
『神様』の立場から絶対に踏んでおきたい過程であったのと同時に、何よりネムちゃんの、最後のお願いでもあるのだ。
何が何でも叶えてやりたかった。
ザビの保護に成功した俺は、すぐさま天界へと帰還した。
何が起きているのか、アイツはわかっていなかったようだが、お構いなしに部屋へと運び、会話の姿勢を示した。
すぐには受け入れてもらえなかった。何度も殴られたし、魔法も行使された。
一通りの反抗をし終え、どうにもならないと悟ったザビは、大人しく『答え』を聞き入れる体勢になってくれた。
そこで、ようやく歴史が動くことになったのだ。
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