4-62.熱と輝きに嘘はない
※今回は、最初のパートのみイノー、以降はアポロン視点から展開されていきます。
今日はワシ史上、一番最悪な日となった。
アレ即ち、体調不良は、再度ワシに降り掛かってきたのだ。
『
これだけ一気に舞い戻られると、こちらとしても対処ができない。
ゆらりと重心が傾く感覚に、全身が溺れていく。
呼び掛けられる声と共に、右半身に感じる温もり。これは一体誰のものだろう。
その疑問の『答え』が得られることなく、ワシの意識は完全に飛んでいった。
×××
腕の中に抱えた君の目は、固く閉ざされ、小さく痙攣していた。
そこに確かな重みはあれど、先ほどまでの勇ましさからは想像できない程に軽かった。
こんなに華奢なのに、オレっち達を止めるために必死になって、自分の存在意義を証明しようとしていた。
オレっちが、十二年も前に教えた
その原動力は仲間のためだろうか。自分自身のためだろうか。
前者ならよい仲間に巡り合えたことが予想できるし、後者でもかつてのスーのような信念が受け継がれていることが読み取れる。
……まぁ、どっちだって構いやしない。こうしてつながれた命があるなら、それでいい。
君の涙を見ることができた。その涙に、偽りなんかないことを知っている。
本心から来る真実の涙には、熱と輝きが宿るんだ。
だから、
オレっち達『オリュンポス十二神』がここに来た理由は、言うまでもなく『
ムネモシュネの賭した命に報いてやる義理。これを破っては、『神様』の箔も落ちるというものだろう。
大前提、ゼウスたっての願いだったのだし、『オリュンポス十二神』として無視する訳にもいかなかったけど。
この白い檻から逃れたゼウスは、大丈夫だったかな。
君の攻撃は、本当に迅速だったから、想定外の魔力なり、体力なりを消費したに違いない。
ただ、きっとゼウスなら大丈夫だろうという確信めいた気持ちもない訳ではない。
――ザビという少年を、天界に届けること。
たったこれだけのために、ゼウスが動くのは惜しいかもしれないけど、天界に着くことが目的ではないのだ。その後、ゼウスは――。
おっと、ゼウスの話より、『今』はもっと大事な話があるじゃないか。
胸中で苦しみ出した君を救うためにも、早くここから
協力を仰ぐために後方を振り返ると、そこでは既に白い壁の破壊を試みる皆の姿があった。
この『オリュンポス十二神』の中でも物理最強を
彼の殴る一点に即刻罅が入り始めたかと思うと、一気にその罅から壁が崩れていった。
「流石っすね、アレス!」
「まァ、力仕事ならオレが最強だからなァ!」
「さ、無駄口叩く前にさっさと『
「言えてる言えてる」
女性陣は総じて冷たいが、戦況は悪くない。
君は一旦、仲間に預かっていてもらうとして、そこからは『
こちらの世界に手を出したこと、後悔させてやる。
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