4-59.専売特許の意地比べ(前編)
※今回は、イノー視点から展開されていきます。
急に思い出された幼少期の記憶には、奇しくも『神様』の言っていた名前、スーが登場した。
『神様』が言うには、お気に入りだったスーという人物はワシに似ていたようだ。
幼少期の記憶で触れられていたスーとは、実際に逢ったことはない。
だが、血筋の関係から恐らくワシと似ていただろうことはわかってしまう。
もし、仮に『神様』のいうスーと、ワシの知っているスーが同一人物であるなら、そこから考えられることは――。
「あぁ、なるほど。そう言うことなら、きっと
「……?」
「魔法を使って君の真実を覗かせてもらったけど、もう『答え』は出たよ。
オレっちのお気に入りだったスーと、君が思い出したスー。
この二人は元々
これは動かしようのない真実っすね」
薄々勘付いていたことではあるが、こう面と向かって言われると認めたくなくなった。
そもそも、なぜワシの真実を見抜けたのか。真実に関する魔法は、ワシの専売特許の筈だ。
この領域に入ってこられては、ワシに立場はない。
そんなワシの狼狽にさほどの興味も示さずに、その『神様』は言葉をつなげ始めた。
「――オレっちと彼女の出逢い、それは
世に言う一目惚れの典型が、そこにはあった。
数多くの女性に目を奪われてきたオレっちが、その誰よりも惹かれ求めた存在がスーその人だったんすよ」
「…………」
まさか馴れ初めでも語ろうとしているのだろうか。
そんなのを聞かされて、ワシはどう返せばいい。『今』は戦闘中だ。
そんな悠長に口を遊ばせている場合ではない。
口より手だ。口より足だ。
口より全身の筋肉という筋肉に働きかけて、敵を捻じ伏せることに努めるべきだ。
ワシの胸中を
淡い願いは、何よりも軽く、何よりも薄い。
強靭な胸板、もとい思いの元には、足元にも及ばない。
会話が期待できないと思ったワシは、速攻奇襲攻撃を仕掛け、威嚇に次ぐ威嚇を決行した。
『
これにより
交戦時に考えた戦略の一つ。奇襲性能を買って、選んだ択だった。
最初こそ、一瞬の瞬きの遅れが、命を刈り取る一打になり得る可能性を秘めていた。
だが、次第に攻撃手段の分析が行われていき、数十秒後には片手で往なされる段階にまで落ち着く結果となってしまった。
奇襲を受け止め、安定を見定めた『神様』。彼は尚も、惚気話を展開させていくのだった。
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