4-53.抱えた責任
※今回も前回と同様、イノー視点から展開されていきます。
その檻の名は『
無機物でさえも真実を植え付ける『
我が研究室『ウェーリタス』の壁に沿わせて隠していたが、愈々お披露目の時が来た。
これで五柱の『神様』を……。どうしてだ。なぜ一柱いなくなっている?
まさかあの短時間で逃げたとでも言うのか。
そんなことができる訳……などと人間の尺度で噛み砕ける概念ではないな。
まぁいい。四柱も抑えられれば上出来だ。
きっとザビ少年やエクの役に立てた筈。
見えなくなってしまった外に思いを馳せながら、ワシは対峙する四柱に啖呵を切り始めた。
「どこの馬の骨とも知らないが、ワシ達はワシ達で手一杯な状況なんだ。
勝手に降臨して場を荒らして下さるな、この『神様』風情が!」
歩幅は変わらない。尚も展開された場の闊歩を続けている。
我ながら大きく造り過ぎてしまった。
『
これは失態であったな。と、そんなことを頭に思い浮かべていた矢先、真ん中に立つ『神様』が眉根をピクリと動かした。
端正な顔立ちに、すらりと伸びた長身。地上にいれば一目置かれるであろう、特段の美男神が口を開く。
「オレっち達が、『
オレっち達は『神様』の中でも最上位――『オリュンポス十二神』にございますが何か?」
自らを世界の頂点と信じて疑わない。『神様』としての尊厳に塗り固められた箱入りらしい言動が飛び出してきた。
これだから『神様』は嫌いだ。間違っていることが一つもないとでも言いたいのだろうか。
確かにワシは、言い方を荒くした。
でもそれは、この混沌とした戦場に新たな敵として君臨してきたことに対する怒りから発したまでに過ぎない。
人類は皆、必死に抗戦していた。
タナトス神にヘラ神。両者共々曲者で、ザビ少年もエクも苦戦を強いられていたように見えた。
そんな只中で、なぜ現れたのか。
二人の邪魔だけは絶対にさせたくない。
この場でまともに動ける人材がワシ以外見当たらなかったから、ここで矢面に立ち、彼らを、仲間を守ることにしたのだ。
奥底で悪さをし続ける不調が、『今』も尚、脳の機能を阻害している。
正常な働きでないからどうした。ワシが決めたことに変わりはない。
部隊長としての責務、果たさせてもらう。抱えた責任は、払うまでが道理なのだから。
「『神様』に上も下も関係ない。ワシはただ、この場で邪魔立てする奴らを許せないだけなのだ!
だから、食い止める。お前達など、ワシだけで十分だぞ‼」
『
そして、『
となれば、残りの魔法行使枠は二つあることになる。
一つは奇襲性能のある、あの魔法を使うとして、もう一つはどうすべきか。
「俺達によくもそんな口が利けたなァ、人間ッ!
そんなんだから『
「アレス、言えてる」
「そうだそうだ」
ほほう、言ってくれるものだ。
また新たな『神様』達が口を開いた。どいつもこいつも自分の名すら名乗らない。
名乗る価値すらないとでも言いたいのだろうか。
気にくわない。だったら、ワシから行かせてもらう。
もう突き進む道は決めたのだ。
「『オリュンポス十二神』だか何だか知らないが、自己紹介もロクにできない『神様』に罵られる筋合いなんかないぞ。
因みに、ワシの名前はイノー・スー! 『我世』第四部隊――『
「イノー・スーだって⁉ まさかお前、スー家の人間なんすか……⁉」
ワシの名乗りに、
その着眼点は、まさかの家名だった。
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