4-50.暁闇に潜む影
※今回も前回と同様、イノー視点から展開されていきます。
やけに布団が重く感じる。これは本当に布なのか。
上半身を起こそうとすると、途端に身体中に痛みが走った。
「痛たたたたたた……」
特に節々、関節が少しでも動く度にワシを苦しめ、
皮膚と寝間着が、汗でべったりくっついているのも気持ち悪い。
早く着替えてしまいたいが、嫌なことに動きに連動した痛みによって発汗している節もある。
となれば、出かける時にも着替えは必須であることから、そこにはかなりの心理的障害が付き纏ってくることになるということだ。
溜め息は尽きない。外せない用事があるからこそ尚更だ。
運のいいことに、時間だけは予定通り、
ワシは『ウェーリタス』に備え付けられた洗面台まで何とか移動し、水道の蛇口を捻る。
いつもよりゆっくり出てきたように見えたのは、恐らくワシが疲れているからだ。
これだけの疲労感には、連日の復興作業でこき使われているのも要因に挙げられるだろう。
だが、やはり大きいのは、ザビ少年が起きてきた時のために、できるだけ作業を進めておかなければという鉄の意志が、ワシを際限なく働かせようとしていたこと。そこに非があるに違いない。
……まぁ、望んでやったことだ。今日のために、無理な努力も続けてきた。
今日が終わるまでは何が何でも元気でいなければ。
(ガツン!)
なんとそこで、脳天が何かにぶつかった。
突如見開かれた双眸が映したのは、割れた鏡と血だらけの頭だった。
やってしまった。まだ寝ぼけていたのか、鏡に頭突きを食らわせていたらしい。
今日の作業はお休みでももらおうか。夜までには回復しておきたいしな。
ザビ少年を
さて、水でも飲んだら『
休む由を伝えて、できるだけ長く休息を取るんだ。善は急げとも言うじゃないか。
早速『
容器にはなみなみと水が注がれている。せめて多少なりとも痛みを感じないよう、ゆっくりとした動作で蛇口を元に戻す。
腕を上へと持ち上げ、煽るように流し込んだ。すると、変なところに入ったようで、ゴホゴホと
そうだぞ、イノー。ワシは病気なんだ。
急ぎ過ぎるのも大概にせねばな。
ころころと変わっていく考えにはさほど責任をもたず、そろそろかと扉の方へと向かう。
音もなく開いた扉から現れた幹部に事の次第を伝え、柔く手を振って見送った。
よし、これで晴れて……ってあれ。何故だろう。
さっきより熱くないかもしれない。身体の辛さは変わらねど、どこか心に余裕ができた。
丁寧に汗を拭き取って、着替えを終えると、机に向かって書き出した。
こんなこと企画の段階では考えていなかったが、きっとザビ少年も喜んでくれる筈だ。
いつしか頭痛も併発していたが、ワシにはもう関係なかった。
この程度の痛みなら、最近はずっと侵されている。
手は動き続け、目も足も、全身の至るところにまでガタが来始めたころ。
その日に考えた招待状と、おめかしの衣装がザビ少年の元に送られていた。
その時は未だ作業の始まる三時間も前のことだった。
×××
外は段々と暗くなってきて、いい頃合いになってきたのではないだろうか。
『
彼らの見据える先には、一人の組織員。その名もザビ・ラスター・シセルがいた。
丁度、今日の主役が登場してきたところだったらしい。
観衆に合わせるように、ワシも大きく拍手を捧げた。
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