4-45.祈りの一歩
※今回も前回と同様、エク視点から展開されています。
――さぁ、
誰かに聞かれているような……。え、えぇと、どちら様ですか?
あぁー、そう言うことか。理解したよ、覚醒したんだね、エク。
ということは、名実ともに英雄になれる第一歩を踏み出したってところかな。
俺達も『今』、そっちに向かっている。
なかなか連絡が付かない奴がいて遅れてしまったよ。待っていてくれ。
時世界の安定と引き換えに、耳奥を叩いた誰かの声。
大分とテキトーな印象を受けるが、一体何者なんだろうか。
そんなことを考える暇もなく、ヘラは嫌な口調を並べてきた。
……この件に関しては、しょうがなくはあるだろう。
そもそもの発端は、およそ三時間前に僕の言動を受けたこと。
ヘラの言葉を突き放すような、ただ毒しかないような言葉に感じてしまうのはそのせいでしかない。
まぁ、実際には三時間経っておらず、僕と魔法を行使した誰かがその三時間を感知していただけだが。
結局、悪いのは僕と、その印象の下地をつくったタナトス。
ヘラはただ毒しかないのではなく、ただ被害者なのだ。
時世界の中では、たった一回しか倒すに至れなかった。それでも、関係ない。
ここで救えば、僕は英雄の一歩を踏み出せる。
謎の存在は、僕にそのことを示唆してきた。
わざわざ英雄という言葉を用いてまで焚き付けてくれた。
その期待、絶対答えてみせる。それが、これまでの罪を償っていく上でも、大きな意味をもつと信じているから。
見ていてくれ、ザビ、ロビ。お前達に顔向けできるお兄様になってみせる。
そして、お父様。上から見ていてください。
これが、お父様と歩んだ英雄です。
お父様なくして、僕の英雄は極まりませんでした。
まだ道半ばですが、きっと――きっと本物の英雄になってみせます。
僕はギリギリと歯を鳴らすヘラと、合わなかった視線を絡める。
「へぇ、図星だったから強がってるんだ。
悪いけど、僕が勝つ。もう全て読めたから」
僕の言葉は、内なる心に巣食ったタナトスに向けて投げられた。
面と向かって言われたヘラは、気付きもしないのだろうけど。
「ふん! まぁ、読まれたところでどうということはない。
アタシは上位の『神様』。腐っても『オリュンポス十二神』で幹部をやっていた。
その実力さえも知らないようじゃ、坊やに勝ち目はないよ。――『
だから、知っているんだよ、タナトス。
お前が創り上げた最強兵器は、既に骨の髄まで理解した。
僕がここで先手を打てば終わる。
――できる限りお前を苦しめるかたちで終わらせるから安心しろ。
無詠唱は、もう完璧に習得した。
僕が
ただ胸の中で、祈るだけだ。
捧げる対象は、勿論『神様』ではない。
誰でもない、己自身に捧げ、誓う。
――『
『消能者』の魔法。
これによって、ヘラが望む、いや、タナトスが望む展開になんか、決してならない。
僕は心して、ヘラの口が開かれるのを待った。
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