4-40.その終わりは

※今回は、エク視点から展開されていきます。



 ――僕はまだ、一度たりともヘラに攻撃を与えていない。

飛び掛かろうとした時、あの『追弾爆発』に巻き込まれ死んでしまったのだ。……でも、機会チャンスを得た。

人間はたった一つの命を燃やして生きるしかない。それなのに、禁忌に触れ、もう一度この地に立つことができた。

摂理には背くのかもしれないが、それならそれで構わない。ただ僕は、この貰った命で、オバさんヘラる。それだけだ。


 僕の手札は、完全に残っていると言っても過言ではない。

初めにも言った。僕はまだ、一度もヘラを攻撃できていないのだ。

そこに多くの余白があることは明白。勝利の布石が眠っていることを信じよう。

そうじゃなければ、潔く『負け』を認めなければならなくなる。


 僕は『つなぐ者ラスター』の名を背負っている。

それはお母様やお父様は勿論、生き別れたロビや、ザビに至るまで、全てが『今』の僕の原動力になっていることを意味しているのだ。

 ……さぁ、やろう。仮にも僕は『強戦者』と呼ばれている。

勝てない相手なんていない。まずは――。




×××




 目の前に立つヘラには迫力があった。

高圧的な目を振り下ろし、僕を委縮させんとしてきていた。

僕はヘラの出方を窺い、僕の使うことのできるの『神種ルイナ』の力を、どこで使うか図っていた。


「坊や、おいたが過ぎたようだね。

アタシを不快にさせた坊やの先にあるのは、地獄のみだ。覚悟しておいて」


「へぇ、図星だったから強がってるんだ。

悪いけど、僕が勝つ。もう全て読めたから」


「ふん! まぁ、読まれたところでどうということはない。

アタシは上位の『神様』。腐っても『オリュンポス十二神』で幹部をやっていた。

その実力さえも知らないようじゃ、坊やに勝ち目はないよ。――『睥睨リリー』」


「…………」


「どうしたの、さっきまでの威勢は。一言も発さなくなるなんてね。

……まぁ、当然と言えば当然のこと。だって『睥睨リリー』は、実力差を絶対的なものにする魔法なんだから。

これで、もう殺し合いも終了。あとは、を使えば、全て解決する。

あぁ、これでタナトスに褒めてもらえる。アタシが新世界を統べるのも、直ぐ近くまで迫っているわ」


「…………」


「それにしても愉快だこと。あれだけ吠え続けていた坊やがここまで大人しくなるなんて……。

はは、少しくらい虐めてもいいよね。どうせ死んでいなければいいんだもの」


 ――僕は殴られていた。交互に飛んでくる拳の応酬に何も答えず、耐えていた。

。これが魔法の効果であることは知っていた。

僕ならば、『消能者』の『斬無オブリタレイト』で、そんな魔法打ち消せると思った。でも、失敗したらしい。

僕には届かなかった。口ばっかりが先行して、何一つ成し遂げられなかった。

……これで死ぬのか。だとしたら、本当にごめんなさい。

また、無下にしてしまった。つなげてくれた命だったのに。


 そうして、時は来た。あの魔法が行使される。

そうすれば、僕の意志は完全に――。


「あはは、あー楽しかった。憎たらしさも和らいだかなぁなんて。

さてと、最後の仕事をしよう。この魔法は『睥睨リリー』が成功しさえすれば、完璧に決まる。

もうアタシの『勝ち』は確定したのよ。――『金林檎ストック』」


 最期の言葉、これで全てが終わる。

こんなにもあっけなく散ってしまうとはな。悲しいよ、本当に。


――でも、その終わりは僕じゃない。


 笑い声を高らかに響かせるヘラの瞳が一気に小さくなる。口元からは涎が吹き出された。

僕の左拳は、明確にヘラの鳩尾を突いていた。僕の目が独特の光を放っていた。

それは、もう既に昔の僕とはまるきり

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